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「国鉄由来の縦割り組織から脱却する」、JR東が40年ぶりの大改革に挑む理由。喜勢社長が明かす「Suica経済圏」の未来、ウォークスルー改札とチャージ上限撤廃で何が変わるか?

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喜勢 陽一/きせ・よういち 1964年生まれ。千葉県出身。1989年東京大学法学部卒業後、JR東日本入社。人事部長、執行役員総合企画本部経営企画部長などを経て、2024年4月に代表取締役社長に就任(撮影:今井康一)

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1987年4月の国鉄分割民営化から約40年。JR各社は事業、組織などさまざまな面で激変期を迎えている。国内最大の鉄道会社であるJR東日本は、かつてないほどの組織・人事制度の大改革に乗り出す。同時に、新たな経営ビジョンとして「勇翔2034」も策定した。なぜこのタイミングで矢継ぎ早に、新しい組織体制や成長戦略を打ち出したのか。JR東日本の喜勢陽一社長に聞いた。

ーー今年7月に新経営ビジョンを策定しました。背景には何があるのでしょうか。

2018年に発表した10年計画「変革2027」は、少子高齢化を迎えマーケットが縮小していくことやお客様の働き方の変化といった問題を意識し、構造改革を進めることを目的としていた。

ところが、コロナ禍によって当初5年先、10年先と見ていた経営環境の変化が前倒しで到来した。コロナ禍で鉄道輸送の利用客が大きく減少し、経営の脆弱性が表面化した。現実的な問題として市場の変化を実感した。

そこで新しい変革ビジョンとして、「モビリティ(鉄道事業)」と「生活ソリューション(不動産や消費関連事業)」の二軸をいっそう推進して成長を目指す「勇翔2034」を策定した。

ーー「勇翔2034」で中期的に目指す数字はハードルが高いのでは?

2031年度売上高4兆円超、ROE10%以上という目標を掲げた。ROEを重要視するのは、トップライン(営業収益)だけでなく、資産の効率性もしっかり見ていこうという意図がある。

売上高4兆円超という目標は、現在(2025年3月期)の2兆8875億円から約40%増になる。普通に仕事をしていてできる数字ではないが、決して届かない領域ではない。今期(2026年3月期)の営業収益は3兆230億円を計画しており、これは過去最高の水準だ。モビリティの営業収益を2024年度比で2000億円、生活ソリューションで同8000億円以上伸ばす。さらに、その先(2034年度)の営業収益5兆円に向けた成長軌道を描いていく。

当たり前を超えていく

ーー組織の大幅刷新にも着手します。

「勇翔2034」では、「当たり前を超えていく」ことを掲げ、既存事業の成長に加えて非連続な成長により、成長戦略のステージアップをしようという考えがある。これを推進する際の両輪として、組織の大きな改正と人事制度の改正を発表した。われわれの前身は国鉄だが、本当の意味での民間企業としての内実を作っていきたいと考えた。

新ビジョンの推進には、組織改革が不可欠だ。国鉄由来の縦割り組織から脱却し、顧客を第一に考える組織へと変革する。これまでの「本社-本部・支社-第一線の現場」の3層構造において、本部・支社というのは国鉄時代の鉄道管理局の区分けがベースとなっている。これまでずっとこの体制できたのだが、今回はこれをお客様のご利用状況とか、地域のさまざまな特徴とかに、マーケットのあり方を踏まえて36の事業本部に再編する。お客様や地域に密着した事業を推進していく。

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