【深層】「スーパードライ」は戻ったが、「ウィルキンソン」「カルピス」の品薄はなぜ続く?アサヒ「サイバー攻撃」、今も終わらぬ大混乱
11月13日、大手ビールメーカー各社が毎月発表しているビールなどの販売状況の10月分が発表された。それぞれ前年同月比で、キリンビールはビール類の売上高が19%の増加、サッポロビールもビールの販売数量が19%増え、いずれも値上げ前の駆け込み需要を反映した、今年3月に続く伸び率となった。サントリーもビールの販売数量は3%の増加となった。
一方で9月末にサイバー攻撃によるシステム障害に遭い、一時商品の出荷がストップしたアサヒグループホールディングスは、アサヒビールが販売するビールやRTD(チューハイなど)、ノンアルコール飲料などを含めた売上金額について、概算で前年同月比で約1割減となった。
この数字について同社は「手作業でなんとか出荷できた商品に関して、多くのご注文をいただいた結果」だとしている。アサヒの酒類の国内の売り上げのうち53%がビールだが、このうち半分以上を看板商品の「スーパードライ」が占める。まずはスーパードライの出荷をいち早く再開し、その後、各カテゴリーの主力商品を順次出荷していくことで、一定程度はカバーできたとしている。
出荷再開できた商品数は1割余り
アサヒを襲ったのは、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃だった。9月29日にシステム障害が発生し、国内グループ各社の受注と出荷業務、コールセンター業務が停止。さらに、個人情報流出の可能性があることも判明した。
アサヒでは、10月1日から電話やFAXでメイン商品の「スーパードライ」の受注を再開した。生産システムは影響を受けなかったため、翌2日からは国内全6工場でビールの製造を始め、9日までに食品や飲料を含むすべての工場が再稼働した。
2週間後の10月15日からは、「アサヒ生ビール(マルエフ)」「クリアアサヒ」「ドライゼロ」「ブラックニッカクリア」など、主力商品から順次、出荷を再開。現在、平常時の売上構成比の8割を占めている、いわゆる主力商品の出荷は再開している。だがそれは全体の商品数でみると、約500種類のうち1割余りにとどまっているのが現状だ。
影響は業界全体にも広がった。アサヒ商品の出荷が停止した直後、アサヒのビールの代わりを求めて、他社のビールに注文が集中した。アサヒを除くビール大手3社はそれぞれ、急増した注文に対し、主力の商品に生産を絞ったり、新規の顧客への出荷を制限したりする「出荷調整」を行った。
さらに各社とも、商品の安定供給をはかるため、予定していた一部のお歳暮用の詰め合わせ商品の販売を休止するなど、逼迫する需給への対応に追われた。
今年9月に上場した、沖縄のオリオンビールは「オリオン ザ・ドラフト」の県外での販売をアサヒに委託するなど提携しているが、出荷停止による影響で、売り上げが4億円程度減少すると明らかにした。




















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