生成AIや自律型AIエージェントの導入により、さらなる変革が期待される業務プロセス。そこを主戦場としてきた国内のバックオフィスSaaS業界は今、かつてない競争にさらされている。
コロナ禍でリモートワークが広がった2020年後半から21年ごろにかけては、DXが今後さらに進むとの見方から、国内のバックオフィス系SaaS銘柄の株価は軒並み上昇した。しかしアメリカでの金利上昇などを背景に、グロース株が下落。直近は停滞感が目立つ。バックオフィス系SaaS各社の株価は上値が重い展開が続き、市場は今後の成長性に厳しい視線を向けている。
この状況について、「楽楽シリーズ」を展開するラクスの中村崇則社長は「地に足が着いた段階に入った」と冷静に受け止める。インボイスの導入や電子帳簿保存法改正といった強力な外部要因による特需も一巡し、バックオフィスSaaSを取り巻く環境は難しくなってきているという。
ターゲットは中小企業⇒大企業に
競争が激しくなる中で、各社が共通して注力するのが、ターゲット層のシフトだ。
マネーフォワードやフリーをはじめとする多くのバックオフィス系SaaSは当初、中小企業を中心にシェアを広げてきた。マネーフォワード執行役員の山田一也氏は「中小企業はITやシステム投資が進んでいなかったため、クラウドやSaaSによって解決できる課題の余地が大きい。対して中堅やエンタープライズ(大企業)は、いわゆるパッケージソフトやオンプレミス型の重厚長大な投資が行き渡り、一見課題感はないように見えていた」と振り返る。

転機が訪れたのは17~18年ごろ。中小企業向けのプロダクトに機能を拡張することで、中堅、大企業の課題解決にも対応できるという手応えを得たという。創業期に導入したスタートアップ企業が成長し、IPOを目指す規模へと拡大するにつれ、より高度な内部統制機能や複雑な業務フローへの対応も求められるようになり、自然とターゲット層を広げていった。




















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