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〈「SaaS is Dead」は本当か〉「バクラク」 LayerX代表が語る"AI時代"の生き残り方 「SaaSを選ぶ基準は明確に変わる」「この数年で他社を突き放す」

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福島良典(ふくしま・よしのり)/1988年生まれ。東京大学大学院工学系研究科修了。 大学院在学中の2012年にGunosyを創業、代表取締役に就任し、創業よりおよそ2年半で上場を果たす。 18年にGunosy子会社として立ち上げたLayerXの代表取締役CEOに就任(撮影:尾形文繁)
経費精算や請求書処理の業務を自動化するサービス「バクラク」を提供するLayerX。生成AIが注目を集める以前の創業当初から、SaaS(Software as a Service、クラウド経由でのサービス提供)にAIを組み込んできた。今年9月には「シリーズB」で150億円を調達し、AIのさらなる実装を目指している。
AIが普及・発展し、従来のSaaSが果たしてきた役割を代替する動きもみられる中、SaaS企業に求められる価値はどう変化するのか。福島良典CEOに話を聞いた。

AIプラットフォーマーにない強み

――生成AI(LLM)の登場以降、サービスの競争優位性にどのような影響があったのでしょうか。

米OpenAIのようなプラットフォーム企業が、SaaSのようなアプリケーションレイヤーに降りてくる動きはすでにみられる。例えばコーディングの領域は、プラットフォーム側に食われ始めている。彼らはデータとナレッジで解ける問題、つまり(数学オリンピックなどのような)「世界中どこでも答えが1つ」のタスクをコモディティ化するのが得意だ。

しかし、われわれSaaS企業が強みを持つのは「コンテキスト(文脈)依存」が強いタスクだ。

例えば、経費精算の申請レビューで「この申請を差し戻すべきか」を判断するには、一般的な知識だけでは不十分だ。その会社の社内規定、膨大な過去の申請とリジェクトの履歴、さらには「会社Aではこの記載内容でOKだが、会社Bではより詳細な記載内容でないとだめ」といった個社の文脈まで理解する必要がある。

これらはデータやナレッジの問題ではなく、その企業固有の複雑なコンテキストの問題だ。OpenAIがこのような個社の文脈まで深く理解し、チューニングしたアプリケーションを作りに来るとは考えにくい。

私たちは、創業当初から経理の知識やナレッジ、個社ごとの文脈をAIサービスの中に組み込んできた。業務を俯瞰して問題を分解し、データを整えてユーザーに使いやすい形に落とし込むプロセスには膨大なノウハウが必要だ。

この蓄積効果は今日明日頑張って追いつけるものではなく、ほかのAIを付けただけのサービスと比べても、ユーザー体験に大きな差が出ると認識している。

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