オープンAIとエヌビディアが「日立を選んだ」必然→なぜビッグプレーヤーと協業できるのか、10年で日立が突き進んだ"グローバル化"で描く野望
10月2日、東京・丸の内の日立製作所に、世界中から注目される起業家が姿を現した。
アメリカのオープンAIのCEOであるサム・アルトマン氏。協業に興味を持っているとオープンAI側から日立へ連絡があったのは、わずか1週間前のことだった。
日立とオープンAIが協業するならば、可能性のある領域はどこか━━。日立社内では猛スピードで資料作成が進められ、訪問当日は15分間のプレゼンテーションが行われた。その後、アルトマン氏から徳永俊昭社長に対し、「これはできるか」と矢継ぎ早に質問が投げかけられた。
ミーティングの終わり、徳永氏はこう切り出した。「サムさん、今日の話で一緒にできるというのは大体わかったと思うので、基本合意書(MOU)を交わせますか」。アルトマン氏は「まったく問題ない」と、さらっとサインをした。
これから両社は、データセンター向けの送配電設備や冷却技術の提供、さらにオープンAIの大規模言語モデル(LLM)の日立における活用などを検討していく。
同席した戦略SIBビジネスユニットCEOの谷口潤氏は、「あれがシリコンバレーのカルチャーなのだろうが、従来の日本企業のやり方からすると想像がつかないくらいの速さだった」と振り返る。
アメリカ商務省とも「MOU」
さかのぼって9月8日、アメリカのメリーランド州ヘイガーズタウンはお祭りムードに包まれていた。日立の鉄道工場の本格稼働のセレモニーには、東原敏昭会長や徳永社長ら経営陣がそろい、協業先であるアメリカのエヌビディアや州政府、鉄道の関係者らが駆けつけた。真っ赤な“日立カラー”をバックに行われたテープカットは、まるで派手な新車発表会のようだった。
これに先駆けて、日立は9月5日にアメリカでの変圧器工場などの拡張に10億ドル超を投じるとも発表。これにはホワイトハウス、つまりドナルド・トランプ大統領がXで敏感に“反応” した。
10月28日にトランプ大統領が日本を訪れた際の夕食会には、徳永氏の姿もあった。同日、日立はアメリカの商務省とも、送配電網の強化に向けてMOUを締結している。
オープンAI、エヌビディア、アメリカ政府━━。日立は今、ビッグプレーヤーと肩を並べるまでにグローバルで存在感を高めている。時価総額は20兆円を上回り、株価は10年前と比べて5倍以上へ上昇した。日本を代表する総合電機メーカーの日立だが、その中身は変貌を遂げている。





















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