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日本初「つわり治療薬」開発に持田製薬が名乗り/世界43カ国で承認済みも日本では未開発のナゼ

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2030年の国内発売に向け、持田製薬がライセンス契約を結んだつわり治療薬「ボンジェスタ」(写真:レディースクリニックなみなみ提供)

妊婦の7~8割が経験し、日常生活に深刻な影響を及ぼす「つわり」。この切実な苦しみに対し、世界標準の治療薬がようやく日本にも登場することになる。

製薬中堅の持田製薬は12月15日、カナダのDuchesnay(デュシェネイ)社と、つわり治療薬「ボンジェスタ」の国内開発・販売に関するライセンス契約を締結したと発表した。今後、国内での臨床試験を経て、2030年までの発売を目指すという。すでに世界43カ国で承認されており、アメリカで承認されたのは16年と10年も前のことだ。

重症化すれば中絶の選択肢も

つわりとは、妊娠初期にみられる気持ち悪さや嘔吐症状などをいう。妊娠中のホルモンバランスの変化が原因の1つといわれ、個人差はあるものの妊娠5~6週目から始まり、約2~3カ月の間、症状が続く。

日本では「つわりは病気ではない」「赤ちゃんが育っている証拠」といった言説により、症状を軽視する風潮が根強い。だが、その実態は過酷だ。数カ月間に及んで症状が続けば妊婦の生活の質は著しく下がる。「働く妊婦」が増加する中では休職や退職に追い込まれることもあり、経済的損失は無視できない。

全体の0.1%ほどと頻度は低いが、つわりが重症化して体重が減少しすぎると「妊娠悪阻(おそ)」と呼ばれ、病院での治療が必要な状態になる。妊娠悪阻の妊婦から生まれた子どもは、低出生体重児や早産児になる確率が高いこともわかっている。最悪の場合、栄養が取れず妊婦に意識障害などの症状が出るほか、妊娠中絶を選ばざるを得ないケースもある。

それにもかかわらず、国内で「妊娠時の吐き気、嘔吐」を対象として承認された医薬品はまだない。つわりの際に使われる漢方薬はあるが、吐き気の強い時期には独特な風味がネックとなり、服用が難しいケースもある。そのため、食事の仕方を工夫したり、本来つわりは保険適用外の吐き気止めを処方してもらったりして、症状が収まるまで耐え忍ぶしかない。

つわりに詳しい慈誠会病院の恩田威一医師は、症状を軽減させるには食事を小分けにし、経口補水液などで塩分を補うことが大切だと話す。また、マグネシウムやカリウム、ビタミンB6の摂取を意識し、食事にレモンや梅干しを加えること、真水や牛乳、緑茶は控えめにすることなども効果的だという。

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