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夏目漱石も悩んだ「売れる作品」のジレンマとは?金から自由になるために金を欲したお抱え作家・漱石の、本当に欲しかったもの

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絶望に効く今週の名言
「文士の生活」/『筑摩全集類聚版 夏目漱石全集 10』筑摩書房

夏目漱石は「金に転んだ」と非難されたことがある。東京帝国大学の講師を辞めて、朝日新聞社に入社してお抱え作家になったときだ。そういう決断をした理由はいろいろあったが、ひとつにはたしかに収入のためだった。

といっても漱石は、お金を儲ければ偉いと思うような人ではない。むしろ逆で、『吾輩は猫である』などの著作でも、そうした人物を徹底的にけなしている。漱石がお金を欲しがったのは、お金から自由になりたかったからだ。

高収入だったが、出ていくものも大きかった

NHK「ラジオ深夜便」の人気コーナー「絶望名言」に出演中の文学紹介者が、ビジネスと人生の“絶望”に効く名言を毎週お届けする。【火曜日更新】

漱石は高収入だったが、出ていくものも大きかった。今でいう奨学金のようなものも返していたし、実家の夏目家が没落したし、妻の実家も、もとは政府の高官で裕福な家だったのだが、これも没落していた。さらに、養父(幼いとき養子に出されて、9歳のとき夏目家に戻った)にもお金を渡したり、まあ、いろいろあったようだ。自分がお金で苦労しているからか、困っている人にはよくお金を貸してもいた。そうやってさまざまなお金の問題があると、それにからむ人間関係の問題も起きてくる。『道草』という小説にも、そのあたりのことが書いてある。

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