「社会をよくする投資」を知らなすぎた日本の代償 僕らが「マネーゲームのプロ」辞めて本を書く訳
お金を考えるには、まず「社会」から
──お二人の著書は、お金がテーマでありながら、その軸に「社会」を大きくとらえています。
鎌田:田内さんの『きみのお金は誰のため』は小説形式になっているから、本当におもしろいです。純粋にストーリーに引き込まれます。
田内:それは実は、社会学者の宮台真司さんの影響が大きいんです。
以前、宮台さんとある企画でご一緒したとき、経済がテーマなのに「僕たちの世代はもうだめだから、若い人の教育が大事だ」とおっしゃっていたのが意外でした。宮台さんの著書『14歳からの社会学』でも、自分たちが社会の一員であると感じることが大事だと述べている。
でも日本は、若者だけでなく親世代も含めて「社会に対して自分の責任がある」と考える人の割合が、海外に比べて少ない傾向があります。
社会への当事者意識を伝えるためには、知識ベースで「こうですよ」と教えるだけではなく、ストーリーの中に組み込むことが大事だと思ったんです。だから小説形式にしました。
──鎌田さんが、社会に関心を持ったきっかけは何ですか?
鎌田:やはり、小さいころの体験が原点になっています。私は島根県の片田舎で育ち、両親は食料品や魚やお酒を売ったりする、小さな小売店を営んでいました。お客さんは近所のみなさんです。