「社会をよくする投資」を知らなすぎた日本の代償 僕らが「マネーゲームのプロ」辞めて本を書く訳
田内:それに「投資、投資」といわれますが、今の日本には資金需要がないんです。銀行の預貸率も、昔に比べるとすごく下がっているし。
「預金を眠らせておくのはもったいないから、投資商品を買いましょう」と勧めてくる銀行自身が、融資先や投資先に困っているんですよ。なのに投資を勧めるのは、少し無責任じゃないかなと。
日本が、諸外国に比べて預金割合が高いのは、これまで銀行中心の金融でうまく回っていたからですよね。ちゃんと資金がものづくりに流れていた。でも最近は、景気の低迷や、人口減によって日本市場の将来性がないことなどから、企業は資金を必要とするどころか、内部留保を溜め込んでいる。
それを、預金が余っているという事実だけ見て「投資に回したほうがいい」「企業を応援しよう」と言っても、資金需要が少なくて利回りの低い国内には流れにくく、多くの資金が海外に流れている。そもそも応援になっていない。本末転倒です。
そこは僕たちがもっとリテラシーを上げて、鎌田さんが投資しているような会社を増やしていかなきゃいけないんです。
「お金から新しい価値を生み出す力」が失われている
鎌田:銀行は顧客から預かった資金をいろんなところに融通するのに、そこから新たな産業や企業が生まれる循環になっていないですよね。
田内さんがおっしゃったように要因はいろいろありますが、お金から新しい価値を生み出す力が、以前に比べて失われています。企業側も内部留保にお金が滞留し、その力を弱めてしまったのもある。
今、預金の利息が0.02%と、ゼロに近い状態になっています。この数字は、お金が新しい価値を生み出す力が減退し始めた1980年代後半あたりから。融資や投資からどれだけ新たな価値を生み出す努力をしてきたか、の結果だと思うんです。
ようやく最近、金融機関も頑張りはじめたとはいえ、単にお金を貸すだけではなく、助言・伴走しながら事業や産業を成長させる力が、全体的には弱まっているのではないでしょうか。
僕は、お金を増やすだけではなく、社会に新しい価値を生み出す投資を「社会をよくする投資」と定義したいです。
――最後に、お互いの本の好きなところを教えてください。
田内:「社会」という言葉を聞いたとき、他人ごとだと思う人は多いと思うんです。社会って誰かが与えてくれるものだと思いがちですが、実際は1人ひとりの集合体ですよね。
多くの投資に関する本は、いかにお金を儲けるかを教えています。でも鎌田さんの本は、投資がお金を増やすことだけではなく「自分が生きている社会をどうつくるか」を教えてくれると思います。
鎌田:お金って、あればあるほどうれしいものかもしれません。でも本当は、お金の使い方によって、お金そのものにも価値が生まれる。そのつながりによって社会にも価値が生まれて、お金が世の中を幸せにする。『きみのお金は誰のため』は、そういうことをじわりと実感させる本だと思いました。
(聞き手:的場優季、構成:合楽仁美)
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