最高裁が生活保護引き下げ訴訟で違法判決。問題視された「不透明な減額過程」の背景にあったのは、自民党政権への忖度だった

「逆転勝訴」「司法は生きていた」「違法性認める」「だまってへんで、これからも」――。6月27日午後3時半過ぎ、東京・隼町の最高裁判所正門前で、次々と垂れ幕が掲げられると、集まっていた支援者たちから歓喜の声が上がった。
国が2013年から2015年に生活保護費を引き下げたのは、健康で文化的な生活を保障した生活保護法に違反するかが争われた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)はこの日、減額を違法とする初の統一判断を示し、原告への減額決定を取り消した。生活保護の基準額について、最高裁が違法と判断したのは初めてのことだ。
同種の訴訟は生活保護の利用者約1000人が全国の29地裁で起こしている。下級審では判断が割れてきたが、地裁では31件のうち20件、高裁でも12件中7件で利用者側が勝訴しており、国や自治体相手の行政訴訟では異例の勝訴率だった。今回の最高裁判決を受け、残る裁判でも利用者側の請求を認める判断が続くとみられる。
突如持ち出された厚労省の「独自指標」
問題となったのは、国が2013年から2015年に、「生活保護費約670億円を削減する」として、生活保護費のうち食費や光熱費などの「生活扶助」の基準額を最大10%引き下げた措置だ。生活扶助の支給水準は5年に一度、見直しが行われているが、戦後最大の大幅減額だった。減額分のうち、約580億円は物価下落率を反映させる「デフレ調整」、約90億円は一般の低所得世帯との均衡を図る「ゆがみ調整」によるものだ。
裁判の最大の争点となったのが、削減額全体の8割超にあたる「デフレ調整」の妥当性だ。厚生労働省は突如、独自の物価指数(生活扶助相当CPI)を持ち出して、2008~2011年の物価下落率を4.78%と算出したが、物価指数として通常用いられる総務省の消費者物価指数(総務省CPI)の下落率は同期間で2.35%と2倍以上の開きがある。
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