史上最悪の原子力発電所事故を起こした東京電力ホールディングスと国を相手取った裁判は、全国で数十件に上る。いくつかの高等裁判所の判決では国の法的責任が認められたが、それらはすべて最高裁判所の判決によってひっくり返された。その背景に何があったのか──。
緊密な人的関係の存在
──本書では、巨大法律事務所と最高裁、政府、東電との間での「癒着」とも呼ぶべき人的つながりの存在が詳しく書かれています。
その象徴といえる事例が、最高裁で裁判長を務めた人物の、巨大法律事務所への再就職です。
2022年6月17日に国の責任を否定する判決を言い渡した最高裁の菅野博之裁判長(当時)が、その直後の同年8月3日、「長島・大野・常松法律事務所」の顧問に就任しました。同法律事務所は、東電の元会長らを相手取った株主代表訴訟で、補助参加人である東電の代理人を務めているのです。
──ほかにどんな事例が。
「国に責任はない」とした最高裁の多数意見に賛成した岡村和美判事は1983年、弁護士登録してすぐに「長島・大野法律事務所」(現在の長島・大野・常松法律事務所)に所属。検事任官後、法務省、金融庁、最高検察庁に在籍し、法務省人権擁護局長、消費者庁長官を務めた後の19年に最高裁判事に任命されています。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
ログイン(会員の方はこちら)
無料会員登録
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら