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日本からはアクセスできない"アニメの秘境"…「クランチロール」が見せつけた熱狂の器としての迫力 現地で体感した「ファンとの強固な関係」

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アニメ配信にとどまらず、ECや映画配給まで事業領域が広いクランチロール。「アニメ好きならどこかでクランチロールに触れる」という環境を築いてきた(記者撮影)

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アメリカ西海岸に位置する、ロサンゼルス・コンベンションセンター。7月初旬に開催された北米最大規模の日本ポップカルチャーイベント「アニメエキスポ2025」では、アニメ作品やアニメスタジオなどのステージイベントが連日会場を盛り上げていた。

中でもひときわ高い熱気に包まれていたのが、3日目の夕方に開催されたイベントだ。開始前、会場を埋め尽くすアニメファンたちに、何やらオレンジ色に発光する棒が配布されると、前方の進行役が彼らに呼びかける。「会場を3つのセクションに分けるね。(客席から見て右側から)クラン!チー!ロール!と大声で叫ぼう。準備はいいかい?」。

会場の端から端へ、順番に指さす進行役に呼応し、ファンたちもオレンジ色の棒を振りかざしながら、何周も叫び続ける。「クラン!」「チー!」「ロール!」、「クラン!」「チー!」「ロール!」――。イベントが開始を迎える頃には、現場は高揚した一体感に包まれていた。

一見すると、熱狂的なファンを抱えるアニメ作品やスタジオによるイベントかと錯覚するが、そうではない。これは、アメリカの「クランチロール」というアニメ配信サービスが、今後期待の配信タイトルなどを発表するイベントなのだ。

会員数は4年足らずで3倍超に

クランチロールは、海外向けで最大規模のアニメ配信サービスだ。日本からアクセスを図ると、「現在、あなたの地域ではご利用いただけません」などと表示されてしまうが、200以上の国と地域でサービスを利用でき、2025年3月末時点で全世界に1700万人超の有料会員を抱える。冒頭で配られた棒のオレンジは、同サービスのブランドカラーだ。

2006年、カリフォルニア大学バークレー校出身者によって開設。ファンがアニメ作品に非公式の字幕をつけるサイトとして始まった。当初は違法動画が多かったが、2008年にテレビ東京などとアニメ配信で提携したことを機に海賊版を一掃し、正規のプラットフォームに軌道修正した。

その後、アメリカの通信大手AT&Tの傘下となり、2021年にはソニーグループが約1300億円で買収した。すでにソニー傘下となっていた競合のファニメーションと統合し、現地のアニメ配信サービスとしては圧倒的な存在に上り詰めた。2021年8月に500万人を突破して以来、有料会員数は4年足らずで3倍超へと急伸している。

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