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官邸幹部による核保有発言は、本来は取るに足らない放言だが、外国政府に対し間違ったメッセージを出してしまった

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2025年12月18日、首相官邸幹部が、個人的見解と断りつつ、「日本は核兵器を保有すべきだ」と述べた。

〈首相官邸の幹部は18日、報道陣に対し、日本を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえ、個人の見解としつつ、「日本は核兵器を保有すべきだ」との考えを示した。この官邸幹部は、高市早苗首相に対し安全保障政策などについて意見具申をする立場にある。ただ、実際に政権内で議論を進めているわけではなく、核不拡散条約(NPT)体制との兼ね合いなどから実現は難しいとも指摘した。〉(12月18日「朝日新聞デジタル版」)

これはオフレコで行われた懇談だった。オフレコ懇談には、情報源を明らかにしなければ記事にしてよいというオフレコと、いっさい記事にしないという完全オフレコがある。この場合は前者で、記事にすること自体に特段の問題はない。

佐藤優氏によるコラム。ビジネスパーソンに真の教養をお届け。【土曜日更新】

もっとも、完全オフレコの場合であっても、マスメディアの論理からすれば、それは取材源との紳士協定にすぎない。完全オフレコを破って報道した場合、情報源との信頼関係が崩れ、以後、情報が得られなくなるリスクがある。最悪の場合、「出入り禁止」になって情報源にアクセスできなくなる。

しかし、そのようなペナルティーを受けるおそれがあっても、国民の知る権利に奉仕する内容ならば報道するというのが、記者の職業的良心なのである。

「観測気球を揚げる」という手法

そもそも政治家や官僚は、仕事でオフレコ懇談を行う。その中には、公にしにくい内容をあえて話し、マスメディアで報じさせ世論の反応を見る、「観測気球を揚げる」という手法もある。

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