高市首相「台湾有事発言」から1カ月、今こそ冷静に考えたい《こじれた日中関係》を解きほぐすために欠かせぬ"糸口"
高市早苗首相が国会で「台湾有事なら自衛隊の出動もありうる」との考えを示し、中国が反発する事態となってから、1カ月が経過した。日本の芸能人の中国公演が中止されるなど、今も混乱が続いている。12月6日には中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射という極めて危険な行為があり、日本政府は厳重に抗議した。
日本国内では「答弁は妥当で、撤回は不要」「従来の方針から踏み出しており、撤回すべきだ」といった意見が交錯した。一方で、政権側は「台湾有事への具体的な対応については発言を慎む」として、これまでの「曖昧戦略」を維持する構えだ。
日本にとってこの問題は、安全保障のあり方だけでなく、対外政策をめぐる国内世論をどのように集約していくかという「政治の力量」が試される局面となっている。
10年続けた「曖昧戦略」から踏み出した高市発言
経緯をまとめてみよう。
第2次安倍晋三政権下の10年前に成立した安全保障法制では、例えば台湾周辺でアメリカ軍と中国軍が武力衝突し、日本の存立を脅かすような展開となった場合、日本政府が「存立危機事態」と認定。中国軍の攻撃を日本への攻撃とみなして、自衛隊が中国軍に武力行使できるという枠組みになっている。これが集団的自衛権の一部容認である。
国会で審議された当時は、多くの憲法学者が「海外での武力行使を禁じている憲法9条に違反する」と指摘し、国会周辺で大規模な抗議デモも繰り広げられた。
当時の安倍首相は、台湾有事が存立危機事態にあたるかどうかを含めて、具体的なケースを明らかにすることを避けてきた。その後の菅義偉、岸田文雄、石破茂各首相も、その方針を引き継いできた。いわゆる「曖昧戦略」である。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら