特集「「責任ある積極財政」は日本経済を、強く豊かにするのか。」の他の記事を読む
高市早苗政権の「責任ある積極財政」は、過度な円安や長期金利上昇(=実質的な財政破綻)を招くのか。あるいは、政権の期待どおり、実質賃金上昇と消費・設備投資の拡大という経済成長の好循環を生み出すのか──。
現実はこのどちらかの極端に振れることはなく、中間のどこかに落ち着く公算が大きいだろう。その「中間シナリオ」において最も懸念すべきは、資産を持てる層と持たざる層の格差拡大が加速することだ。
春闘と実質賃金プラス化はつかの間の明るさ
春闘で主要企業が賃金要求に回答するヤマ場を迎えた3月18日、自動車や電機、鉄鋼など製造業の労働組合が構成する金属労協は、ベースアップ(ベア)の平均が1万5450円とする回答結果を公表した。3年連続の賃上げ5%台(定期昇給を含む)は確実な情勢だ。
また、厚生労働省の「毎月勤労統計」によると、1月の実質賃金は、物価高の一巡で前年同月比1.4%増と、13カ月ぶりにプラスに転じた。
一見、賃金を取り巻く状況には明るさがあるように見える。
だが、実質賃金のプラス化にはからくりがある。ガソリン暫定税率の廃止(2025年12月末)や公立高校授業料の無償化拡大といった政策効果が大きく寄与しているのだ。
さらに、イラン紛争の影響ですでに原油価格が高騰しており、ガソリンや灯油の価格が再び上昇に転じた。今後は遅れて、電気代や石油化学由来の原材料価格にも波及し、広範にインフレ圧力が再燃するだろう。実質賃金のプラスが定着する可能性は高くない。
そもそも、実質賃金の停滞は今に始まった話ではない。1990年代後半の金融危機以降、四半世紀にわたって定着してきたものだ。つまり、実質賃金が伸びないというのは「変化」ではなく「継続」にすぎない。20年以上にわたり失敗し続けている高付加価値産業の創出を日本経済が成し遂げない限り、この構造が変わるのは容易ではない。
加えて、日本の賃金統計には見落とされがちな構造的な押し下げ要因がある。






















無料会員登録はこちら
ログインはこちら