村田製作所とTDK「ベンチャー投資」なぜ増やす…電子部品大手2社の投資枠は10倍差、村田製作所がCVC設立に至った"危機感"とTDKの"矜持と野望"
電子部品大手・村田製作所のCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)「WONDERSTONE Ventures(ワンダーストーン・ベンチャーズ)」。“第1号案件”となる投資先は、アメリカの量子暗号通信ベンチャー・Aliro Technologies社となった。
Aliro社は2019年に米ハーバード大学からスピンアウトし、量子暗号通信や量子コンピュータ向けソフトウェアとサービスを扱っている。出資額は非公表。
村田製作所は今年4月にアメリカ・マサチューセッツ州にCVCを設立し、次世代通信/6G、光・半導体、生体エレクトロニクス、環境、ロボティクス、スペースの分野において、今後5年間で5000万ドル(約78億円)規模を投資する計画を発表している。
設立以前から村田製作所としてベンチャー投資は行ってきたが、CVCとして独立することでスタートアップ側に資金調達先の候補に入れてもらいやすくする狙いがある。
村田製作所の技術イノベーション戦略部長でCVC代表の榊千春氏は「技術が競合する分野では、ファイアウォールのように本社へ情報が流れない仕組みになっている」と説明する。
社長が示した“危機感”
ワンダーストーン・ベンチャーズは8人体制で、拠点近くの州都ボストンにはマサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学など世界有数の学術機関が集まる。大学から出資を受けるスタートアップも集積し、ソフトウェア系が西海岸に多いのに対し、ハードウェア系の比率が高い。MITのオフィスにもメンバーを常駐させている。
12月1日の村田製作所の投資家向け説明会で中島規巨社長は、「MLCC(積層セラミックコンデンサー)とインダクターに対する利益創出の依存度が高い」と危機感を示した。実際にコンデンサーやインダクターなどを扱う「コンポーネント」セグメントは、連結売上高の59%、営業利益の98%(25年3月期)を稼ぐ。新たな収益源の育成は課題となっている。



















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