個人主義と資本主義に覆い尽くされている
冒頭で断っているように、本書が描くのは「物語的真実」である。アメリカは旧世界の封建的抑圧から逃れてきた人々が定住した地だから、初めからリベラルな社会だという「物語」が国の基礎にある。その上に、独立した個人と財産権を核心とする、啓蒙思想家ジョン・ロックのリベラリズム思想が唯一の政治思想として君臨している。それがアメリカの「真実」だと、著者は論じる。個人主義と資本主義に覆い尽くされているということだ。
70年前、1955年に原著が出版された本書のどこを開いても、その真実を裏付ける傍証や論理が博覧強記をもって繰り広げられる。
第2次世界大戦を勝者として乗り切ったアメリカは、軍事力・経済力で世界を圧倒。他方で旧ソ連をリーダーとする共産圏との冷戦が激化していく時代だ。集団主義的な共産圏に、ロック的リベラリズムの伝統を対峙させる本書が、大きな反響をもって受け止められたのはうなずける。




















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