2011年の出版時、グローバル化の行き過ぎに警鐘を鳴らす本書は、時代への逆行と受け止められた。14年が経過した現在、世界はロドリックが警告した問題──超グローバル化の限界、国家の政策余地の縮小による人々の不満の高まり、民主主義の不安定化のトリレンマ──に直面している。25年には米第2期トランプ政権が誕生し、このグローバリゼーション・パラドクスはより鮮明となった。下編では、本書の今日的な意義を探る。
現代の世界を特徴づける点
現代の世界を特徴づける第1の点は、地政学的リスクがグローバル化の前提そのもの、つまり市場経済を崩し始めたことだ。米中対立は常態化し、効率の視点だけではサプライチェーンを構築できなくなった。かつて市場化の推進をうたった米欧日では、半導体やエネルギー、レアアースなど、国家安全保障と産業基盤の再構築が政策の中心課題となっている。「市場は国家が作る制度に依存する」と説く本書は、主流派経済学から「反経済学的である」との反発を食らったが、今ではそれが主要国の政策体系の中心に組み込まれている。





















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