国境の壁を引き下げ、ヒト、モノ、カネが自由に行き来すると、世界は1つの大きな市場になる。同時に民主主義の価値観に収斂し、豊かで開かれた理想の世界が訪れる──。
ベルリンの壁崩壊後の1990年代初頭、人々はそう考えた。ただ、実際にはその恩恵は、国境を自由に行き来できる、高等教育を受けた高スキル層に限られた。多くの人は同じ場所にとどまり、国境の内側で格差と不満が増大した。
3つは同時に成立しない
理想と現実の乖離を、早くも2011年に論じたのがダニ・ロドリックだった。本書の中心概念は、「民主主義、国民国家、グローバル化追求の3つは同時に成立しない」というトリレンマだ。グローバル化を進めると、国内の社会契約を守るための政策余地は失われ、民主主義との緊張が高まる。国民主権の下、民主主義を優先するなら、深い経済統合は難しい。





















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