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グローバル化追求、国民国家、民主政治は同時には成立しないという現実/ダニ・ロドリック『グローバリゼーション・パラドクス』を読む(上)

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『グローバリゼーション・パラドクス 世界経済の未来を決める三つの道』ダニ・ロドリック 著
ダニ・ロドリック『グローバリゼーション・パラドクス 世界経済の未来を決める三つの道』柴山桂太、大川良文 訳/白水社

国境の壁を引き下げ、ヒト、モノ、カネが自由に行き来すると、世界は1つの大きな市場になる。同時に民主主義の価値観に収斂し、豊かで開かれた理想の世界が訪れる──。

ベルリンの壁崩壊後の1990年代初頭、人々はそう考えた。ただ、実際にはその恩恵は、国境を自由に行き来できる、高等教育を受けた高スキル層に限られた。多くの人は同じ場所にとどまり、国境の内側で格差と不満が増大した。

3つは同時に成立しない

ビジネスに効く名著のエッセンスを識者がコンパクトに解説する。【原則土曜日更新】

理想と現実の乖離を、早くも2011年に論じたのがダニ・ロドリックだった。本書の中心概念は、「民主主義、国民国家、グローバル化追求の3つは同時に成立しない」というトリレンマだ。グローバル化を進めると、国内の社会契約を守るための政策余地は失われ、民主主義との緊張が高まる。国民主権の下、民主主義を優先するなら、深い経済統合は難しい。

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