大国の金融緩和、他国への「意図せざる」波及効果 『苦悶する中央銀行』など書評4点

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ブックレビュー『今週の4冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『苦悶する中央銀行 金融政策の意図せざる結果』

・『アメリカ革命 独立戦争から憲法制定、民主主義の拡大まで』

・『謎とき百人一首 和歌から見える日本文化のふしぎ』

・『酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話』

『苦悶する中央銀行 金融政策の意図せざる結果』ラグラム・ラジャン 著
『苦悶する中央銀行 金融政策の意図せざる結果』ラグラム・ラジャン 著/北村礼子 訳/小林慶一郎 解説(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・東京都立大学教授 松岡多利思

世界金融危機やパンデミックに対し、中央銀行は数々の非伝統的金融政策(ゼロ金利、量的緩和、フォワードガイダンスなど)を開発し実施してきた。危機時の緊急対応として多くの識者が評価する一方で、著者は、非伝統的金融政策は「暗闇への一歩」だと警鐘を鳴らす。本書は、金融理論の第一人者でありながら要職を歴任したラジャンの思想をコンパクトにまとめた一冊である。

新興国経済も影響を受ける金融政策の構造的問題

著者の名が一躍有名になったきっかけは、2005年8月の米ジャクソンホール会議での講演だ。当時のFRB議長グリーンスパンが参加するこの会議で、「FRBが実施している低金利政策が、民間プレーヤーのインセンティブを歪め、リスクテイキングを促している」と述べたからだ。

当時グリーンスパンは「マエストロ(名指揮者)」として半ば神格化され、米国経済は住宅バブルに沸く楽観ムードで、この金融危機到来の警鐘は見過ごされた。その危機が3年後に現実のものとなったのは皆の知るところである。

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