安倍晋三政権の「戦略と統治」を焦点に調査報道 『宿命の子』など書評3点

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『宿命の子 安倍晋三政権クロニクル』

・『バブルの後始末 銀行破綻と預金保護』

・『熱狂する明代 中国「四大奇書」の誕生』

『宿命の子 安倍晋三政権クロニクル』船橋洋一 著
『宿命の子 安倍晋三政権クロニクル』船橋洋一 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・ジャーナリスト 会田弘継

物語は、胸の議員バッジと拉致被害者を救う会のブルーリボンバッジが凶弾に飛び散って始まる。2つのバッジが遺族に戻るエピローグまで1200ページ。息もつかせず読ませる。憲政史上最長、2822日に及んだ第2次安倍政権を描いたノンフィクションを、著者は「政権の戦略と統治を描いた調査報道」でもあると位置付ける。

内向きとなる米国、台頭著しい中国、北朝鮮の核保有国化、台湾有事の可能性──。地政学的な渦が巻き起こる東アジア情勢の中で、新たな国家像を模索し力尽き、凶弾に倒れた安倍晋三というリーダーと、彼を支えた政治家、補佐官らの群像劇だ。

世界激動の中で新国家像模索 「戦略と統治」焦点に調査報道

アベノミクス、靖国神社、尖閣諸島、平和安全法制……安倍政権が主導した政策、直面した課題を21に及ぶテーマで描いていく。密室の会話でも、読者がまさにそこに立ち会うごとく描かれるのは、著者も大きな影響を受けている米国のニュージャーナリズムの手法だ。

そうした描写や首脳らの発言などは、巻末に名前を挙げられただけでも二百数十人に及ぶ内外の政治家や官僚らや、名前を挙げることのできない数多くの人々への取材、あるいは同時代の記録に基づく。重要な発言や描写は、章末ごとに100以上記される注で取材先や出典が示される。

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