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〈書評〉『自由』『プレミアリーグ全史1』『裸のネアンデルタール人』/アンゲラ・メルケルの政治決断、その裏側を赤裸々に記す

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『自由』

・『プレミアリーグ全史1』

・『裸のネアンデルタール人 人間という存在を解き明かす』

『自由』アンゲラ・メルケル 著 上下巻
『自由』アンゲラ・メルケル 著/長谷川 圭、柴田さとみ 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔

ドイツ初の女性首相として16年間の長きにわたり重責を担ったアンゲラ・メルケル。現役時代から多くを語らないことで有名だったが、政界引退後は表舞台から姿を消していた。本書はメルケルとその政治参謀であったベアーテ・バウマンによる赤裸々な回顧録であり、上下巻で約800ページの大著だ。

恩師との決別、欧州債務危機、政治決断の裏側を赤裸々に記す

東洋経済オンラインの愛読者に読んでほしい本を一気に紹介。【土曜日更新】

読者は、1999年にメルケルが恩師コール元首相を裏切ったことや、2009年に勃発した欧州債務危機の舞台裏、そしてメルケルの政治生命を絶った15年の移民受け入れなど重大な政治決断の背後を知りたいという思いが強いだろう。しかし、「首相としてのメルケル」は主に下巻に収録されている。上巻の半分以上は幼少期や学生時代についての記述で、徐々に政治活動へ引き寄せられていく経緯が描かれる。「首相としてのメルケル」だけに興味があれば下巻を中心に読むのもよい。

とはいえ、メルケルの人となりを知るには上巻も面白い。例えば、コール元首相のスキャンダルを自ら“刺した”一件は、一般に「メルケルの非情さ」を象徴する出来事とされてきたが、それが所属政党であるキリスト教民主同盟(CDU)への深い思いに根差していたことも記される。本人談ゆえ割引く必要もあろうが、従前の認識に一定のバランスを提供する材料が随所にあるのも本書の魅力だ。

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