[Book Review 今週のラインナップ]
・『流浪の英雄たち シャフタール・ドネツクはサッカーをやめない』
・『民法研究レクチャーシリーズ 所有権について考える デジタル社会における財産』
・『NHK「100分de名著」ブックス ロジェ・カイヨワ 戦争論 文明という果てしない暴力』
・『奥山清行 デザイン全史』
評者・尚美学園大学准教授 田中 充
ウクライナの市民運動が親ロシア派のヤヌコビッチ政権を打倒した、2013〜14年の「マイダン革命」。その余波で、ロシア国境に近い東部のドンバス地方では、親ロ派分離主義勢力が政府側と激しい武力衝突を起こした。国内屈指のサッカー強豪クラブ、シャフタール・ドネツクの悪夢の始まりだ。チームはこの地を離れざるをえなくなり、14年以降、ホームスタジアムで試合ができていない。
戦争に苦しむスポーツ界 ウクライナ強豪クラブの現在
さらにロシアは、22年2月にウクライナへ軍事侵攻を開始。しかし戦時下にある現在も、クラブは活動を続ける。終息の見通しが立たない苦境に直面しても屈しない源泉に何があるのか。著者は、「クラブ幹部や選手らの語る物語には、世界が耳を傾け続けるべき理由がある」と訴える。
シャフタールは「鉱夫」を意味する。旧ソ連時代の1936年、炭田で潤うドンバスに設立されたクラブは、ソ連崩壊・ウクライナ独立の後、大富豪であるオーナーのアフメトフと名監督ルチェスクが礎を築き、国内リーグ優勝15回を誇る強豪へのし上がった。
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