[Book Review 今週のラインナップ]
・『数学思考のエッセンス 実装するための12講』
・『ロシアとは何ものか 過去が貫く現在』
・『地図でスッと頭に入る 世界の国力ランキング』
・『北朝鮮に出勤します 開城(ケソン)工業団地で働いた一年間』
評者・神戸大学教授 末石直也
コロナ禍では誰もがワクチンについて一家言を持っていて、ワクチンの有効性についてさまざまな議論がなされた。例えば英国のあるブログでは、次のような主張が行われた。
「最近のコロナウイルスによる死者のうち80%がワクチン接種済みだが、全国民のうち接種済みなのは72%にすぎない。これはワクチンが効かない証拠だ!」
実は的外れな主張なのだが、確率という数学のツールを用いて、世の中の現象の説明を試みている一例である。
誤った情報に騙されないための「構造」「ランダムさ」「情報」の力
本書は、天気予報や暗号解読、株価予測といった多彩な例を通じて、数学が世界を理解するための実用的なツールであることを説く。論理的思考力は必要だが、数式は一切登場しない。冒頭のような誤った情報に騙(だま)されないための、数学思考のエッセンスを凝縮した1冊である。なお、どこが誤っているかは、本書第7章で確認してほしい。
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