数学の概念は教育で身につけるしかない
──IQ以外で測る知性には、どんなものがあるのでしょうか。
落合:微分の考え方ができる人って、頭が良くて勉強も得意だと思うんですよ。でも、それはIQテストでは測れないんじゃないですかね。
暦本:距離じゃなくて速度とか、速度じゃなくて加速度みたいな話?
落合:そうです。たとえば理系の研究者は、1変数のパラメータをちょっとずつ動かしたときどうなるかとか、2変数だと動きがどう変わるのかとか、あるいは時間を止めて考えてみたりとかしますよね。加速度を固定するなら、速度をちょっと動かして考えてみようとか。
ロボットの動きを分析するには、時間を止めたり、X軸かY軸を固定したりするじゃないですか。物事の仕組みを理解したり、変化を分析したりするときは、そういう思考法が求められる。
理系の研究者だけじゃなく、スポーツ選手もこれが得意だと思いますけどね。たとえば野球の投手が腕の振り方を変えようと思ったら、それ以外の体の動きは変えずに、いろいろな腕の動きで投げたボールがどうなるかを比較するでしょう。これは知性の中でも重要な要素だと思いますけど、生活の中でそれを考える人はあまりいない。