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〈書評〉『書くことのメディア史 AIは人間の言語能力に何をもたらすのか』『ルポ 薬漬け 医療とビジネスの罠』『教養としての数学史』

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『書くことのメディア史 AIは人間の言語能力に何をもたらすのか』

・『ルポ 薬漬け 医療とビジネスの罠』

・『教養としての数学史』

『書くことのメディア史 AIは人間の言語能力に何をもたらすのか』ナオミ・S・バロン 著
『書くことのメディア史 AIは人間の言語能力に何をもたらすのか』ナオミ・S・バロン 著/古屋美登里、山口真果 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・マネックスグループ取締役兼執行役 山田尚史

人類の手を離れゆく特権 言語を操るAIは福音か警鐘か

東洋経済オンラインの愛読者に読んでほしい本を一気に紹介。【土曜日更新】

ビジネスから私生活に至るまで、AI(人工知能)はわれわれの生活を大きく変えた。本書では、とくに大きな影響がある自然言語領域での変化が、人間を中心に据え、歴史を詳(つまび)らかにし、著名人や偉人の言葉を多数引用しながら論じられている。

先に断っておくと、本書は予言の書ではないし、なにか特定の未来に賭けることを推奨してもいない。AIとの関わり方は個々人が主体的に決めるべきだとし、その材料となりうる情報や思想といった手がかりを提供することが主眼だ。すなわち、文章を書くことにおいて、「自分は何に主導権を持ち、AIにどこまで委ねるか」という根源的な問いに向き合うための案内役を徹頭徹尾はたしている。

著者は米アメリカン大学名誉教授の言語学者で、ITにも造詣が深い。文字の発明に始まり、読み書き能力の社会的な扱われ方、著者や著作権という概念の成立、そして戦時中に発明された暗号解読機の末裔が機械翻訳を行い、今やゲームや小説までも生み出そうとしているといった歴史を綴(つづ)る、その詳細な語り口には著者の専門性が遺憾なく発揮されている。

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