
J・D・ヴァンス『ヒルビリー・エレジー』関根光宏、山田 文 訳/光文社未来ライブラリー
両親の代わりになって自分を育ててくれた祖母が亡くなったとき、死の床の周りに集まった親族を前に著者ヴァンスは聖書を開き、たまたま目に留まったところを読み上げた。「愛」こそが最も偉大であることを説いた「コリント人への第1の手紙」13章からの一節だった──。
貧困と暴力、麻薬禍の中を家族愛で生き抜くヒルビリーたちの過酷な生活を支えたのは信仰である。そのことが本書の通奏低音となり、美しいシーンが時折現れる。
祖母に教えられた信仰
いつものように激しい暴力を伴う家族げんかの後、著者は祖母に尋ねた。「ばあちゃん、神さまは本当にぼくたちのことを愛してるの?」。祖母は頭を垂れて著者を抱きしめ、泣き出す。後に著者は振り返る。「この質問は祖母を傷つけたにちがいない。キリスト教は私たち、とりわけ祖母の生活の中心だったからだ」。
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