
J・D・ヴァンス『ヒルビリー・エレジー』関根光宏、山田 文 訳/光文社未来ライブラリー
「うちの家族は完璧というわけではなかった」。著者自身がそう認める。完璧でないどころか「静かな夕食が、ささいな言葉から、いつ大げんかに変わるかわからない」暮らしは「まるで地雷原で生活しているようだった」。
酔って家に帰っては暴れる祖父に業を煮やした祖母は、眠りこけた祖父にガソリンを振りかけ、マッチで火をつけたこともあった。
夜中の夫婦げんかで家具が揺さぶられ、叫び声が響き渡り、ガラスが砕け散る。小学生だった著者は、騒音で眠れず、健康を害するほどだった。
それにもかかわらず読者の胸を打つのは、貧困と暴力、麻薬禍の真っただ中で揺らぐことなく続く固い家族の絆ではないだろうか。「少人数の核家族で落ち着いた生活を送るなどということはない。おじ、おば、祖父母、いとこらと一緒に、大きな集団となって混沌とした状態で暮らすのだ」。親類縁者も含めた大家族の絆である。
根底にあるのは家族の絆
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