世界一幸福な社会は「お金で買える親密性」の賜物 『希望格差社会、それから』が描く日本のリアル

バーチャルな世界で満足している人が多いからこそ、将来に希望が見出せないにもかかわらず「生活に満足している人」が増える(写真:wisteria512/PIXTA)
ベストセラー『希望格差社会』(筑摩書房)の刊行から20年。その間、日本社会や若者を取り巻く環境はどう変わってきたのか。
稀代の社会学者・山田昌弘氏の最新刊『希望格差社会、それから』より、書評家の印南敦史氏が、現代の日本社会や若者のリアルに迫る。
昭和の幸福モデルの終焉
『希望格差社会、それから: 幸福に衰退する国の20年』(山田昌弘著、東洋経済新報社)の著者は、平成という時代を次のようにまとめている。少し長いが、重要な部分なので引用しておこう。
昭和の希望であった「仕事で努力すれば、報われる」「夫は主に仕事、妻は主に家事で、豊かな生活を築くことができる」「愛し愛されていることが実感できる家族がいる」といったことが、なかなか実現できない人が増えていく社会でもある。
リアルな世界で希望を失っている日本の若者は、このような社会に対し反乱も起こさず、社会を変革しようとも考えず、政治的関心も失いつつある。政治に参加しても、現実の社会を自分たちが希望を持てるように変えることはできないと、諦めきっているのかもしれない。といって、犯罪率も低下しているように、個人的に逸脱行動に走る若者も一部に限定されている。(177〜178ページより)
では、そのあとに訪れた令和についてはどうだろう。注目すべきは、いまやリアルな社会に希望を持てない層が、若者のみならず、加齢によって中年の人々にまで広がっているという指摘である。
平成の時代には経済成長が鈍化し、家族を持っている中高年であっても、経済的にこれ以上豊かな生活を送れないのではないかと不安を抱くようになった。誰もが知るところだが、重要なのは“そこから先”についての著者の見立てだ。
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