「挫折した高学歴者」増加が現体制への批判勢力に 『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』など書評4点

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ブックレビュー『今週の4冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』

・『誰のためのアクセシビリティ? 障害のある人の経験と文化から考える』

・『つい昨日のできごと 父の昭和スケッチブック』

・『ウマの科学と世界の歴史』

『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』ピーター・ターチン 著
『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』ピーター・ターチン 著/濱野大道 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・明治学院大学教授 岡崎哲二

本書は、著者が提唱する社会科学の新しいアプローチ、「クリオダイナミクス」に基づいて、数千年にわたる人類の歴史を解釈し、現在および近未来の米国の社会と国家を展望している。もともと動物生態学の研究者だった著者は、数理モデル(微分方程式モデル)によって動物個体群のダイナミクス(動態)を解析するアプローチを開発し、それを人類の歴史に応用する研究に進んだ。

挫折した高学歴者の増加が現体制への批判的勢力となる

現代の米国に関する本書の分析の骨子を簡単に要約すると次のようになる。第1に、著者が「富のポンプ」と呼ぶ経済メカニズムの結果、一方では極めて富裕な少数の人々に富が集中し、他方では多くの貧困層が生み出される。海外からの移民の流入は、一般的な労働者の賃金を抑制し企業利潤と経営者報酬を引き上げることを通じて、この動きを加速させる。

第2に、経済成長の結果、「エリート」志望者の中から現在の政治経済体制に対して批判的な急進派が生み出される。つまり、経済成長の中で高学歴者が増える一方、社会の中で権力を握るエリートの枠は限られている。そのため、エリートを志望しながら挫折する高学歴者が増加し、彼らの中から現体制に批判的な勢力が現れるのである。

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