米統計の信頼性低下もドルの強さは変わらない。大統領の驚きの主張で数値が歪められる危機。ただ世界の投資家が米国資産を減らすことは難しい
大統領の驚きの主張で米統計の信頼性低下の危機に。ただ世界の投資家が米国資産を減らすことは難しい。

アメリカの7月雇用統計はマーケットに衝撃を与えた。非農業部門雇用者数は前月比7.3万人増加と、予想の10.4万人増加を下回った。この程度の予想比下振れであれば衝撃ではなかったが、5月と6月で合計25.8万人も下方修正されたことが衝撃を与えた。そもそも非農業部門雇用者数の数字は季節調整後のデータなので、実際のデータではない。かつ当初発表される際に集計がすべて終わっているわけではないので、過去2カ月間の数字が修正されるのは通常のことだ。ただ、それにしても25.8万人の下方修正は衝撃的な大きさだった。
トランプ大統領の驚きの主張
統計結果以上に衝撃的だったのは、雇用統計発表の数時間後にトランプ大統領が、統計が政治的に歪められたとして発表元の米労働統計局の局長を解任するよう指示したことだった。これはさすがにむちゃな主張だろう。雇用統計の発表資料では、最終的な雇用者数の増減だけでなく、そうした結果の背景となった詳細なデータまで公表されている。
多くの職員が集計したデータを取りまとめた結果だけを一部の職員が歪める余地はない。市場では多くの優秀なエコノミストが、集計結果がなぜそうなったのか、背景を分析している。集計結果を歪めれば簡単にバレてしまう。そもそも労働統計局の中にも政治的主張の異なる人がいるだろうから、仮に一方の政治的陰謀で歪められたら内部からも不正が指摘されるだろう。
筆者がさらに驚いたのは、トランプ大統領が不満に思っている理由だ。当初、トランプ大統領が集計結果に不満と聞いたときには、FRB(米連邦準備制度理事会)に利下げを要求してきた同氏は、雇用者数の伸びが鈍化していることがもっと早くわかっていれば、FRBはとっくに利下げに動いていたはずだ!と不満を持ったのかと思った。
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