過去の経験則に基づいて大幅利下げを織り込む金融市場。その期待は後退を余儀なくされそうだ。
アメリカの9月の非農業部門雇用者数は市場予想を大きく上回り、失業率も前月から改善。平均時給の伸びも予想を上回り、前年比4%台の伸びを回復した。
1989年以降、前回までの過去5回の利下げ開始月を見ると、今回の非農業部門雇用者数の前月比の伸びは圧倒的に高く、過去5回のうちの最大値の2倍以上。失業率は、過去5回の利下げ開始月にはすべて前月に比べて上昇していたのに対し、今回は2カ月連続の低下となっている。
ジェローム・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長はインフレ率の抑制に自信を持っているようだが、9月のコアPCE(個人消費支出)インフレ率は前年比+2.6%と高止まりしそうだ。インフレ率もFF(フェデラルファンド)金利も、今よりはるかに高かった1989年の利下げ開始局面を除いた過去4回の利下げ開始月には、同+2%程度を下回っていた。
過去の経験則が使えなくなっている?
約1カ月前の本欄でも指摘したように、現在の市場が織り込むほどの急速な利下げを過去に実施したとき、アメリカ経済はリセッション(景気後退)に陥っていた。米国債のイールドカーブ(利回り曲線)はすでに「逆イールド」から「順イールド」にシフトしているが、過去の経験則ではこれはリセッションがすでに始まっているときに起きる動きだ。
もっとも、アメリカ経済は昨年後半に年率+4%という急成長をした後も、今年4~6月期は年率+3%、7~9月期もほぼ同水準の非常に高い成長率となりそうだ。今のところ、アメリカ経済がリセッション入りしそうな兆候を見つけるのは難しい。
アメリカ経済は構造的に変化しており、過去の経験則が使えなくなっているのではないかと考えている。この構造変化の背景としては、主に4つのことが指摘できる。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら