
1年前同様、8月は波乱の幕開けとなった。ピックアップしなければならない材料は数多く、いずれも考察が必要な論点である。
まとめると①アメリカの7月雇用統計の大幅悪化(含む遡及改定)、②雇用統計の大幅悪化を受けたトランプ大統領の乱心(労働統計局長の解雇指示)、③クグラーFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)理事の辞任と後任理事への思惑浮上、④スイスなどに対する関税引き上げの一報などが重なり、大幅なドル安・株安・金利低下が生じている。
悪材料の集中砲火により市場心理は深手を余儀なくされている。
当面の金融市場への影響という意味では時間軸の順に①、②そして③が注目されそうである。
雇用統計ショックは昨年より深刻
まず、①雇用統計の悪化についてはその深刻度をどこまで見積もるべきか悩ましい。昨夏の7月雇用統計もその悪化が市場混乱のトリガーとなったが、翌月は何事もなかったように事態が収拾された。
まだ次回FOMC(連邦公開市場委員会、9月16~17日開催)までに消費者物価指数(CPI)や小売売上高などの重要なハードデータは7月、8月と2カ月分が確認可能であり、結果次第でムードが一変する可能性は相応にある。
もっとも、今回の雇用統計の悪化や遡及改定は、昨年よりも深刻度が大きいかもしれない。
非農業部門雇用者数変化に関し、7月分が市場予想の中心(前月比10.4万人増)を下回る7.3万人増だったことはさておき、5月分が14.4万人増から1.9万人増へ、6月分が14.7万人増から1.4万人増へそれぞれ切り下げられており、過去3カ月では平均して月3.5万人しか増えていなかったことになる。これほど弱い増勢は近年ではパンデミック直後までさかのぼる必要がある。

5月以降、明らかに断層が生じている。
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