
資本主義のアメリカと国家資本主義の中国が異なる経済構造に基づき、覇権争いしている。両国はまるで異なる競技をしているかのようだ。
前者は「サッカー」、後者は「アメフト」のルールでプレイしていると喩える識者もいる。世界がサッカーの試合をしていると信じるアメリカに対し、中国はサッカーボールを抱えアメフトのルールで着実に得点を重ねているというのだ。
アメリカ政府はこれまで、中国が欧米の資本主義に近づくことを望んできた。しかし、機能不全に陥った世界貿易機関(WTO)をはじめ国際的枠組みを通じて中国の経済政策を規制することが限界に達している今日、その期待は消え失せた。
逆にアメリカが、国家資本主義に近づく様相を見せている。つまり、サッカーのルールを無視する中国に対して有効な審判が存在しないため、アメリカもアメフトのルールで応戦し始めているという構図である。
市場の「見えざる手」から大統領の手に
共和党は伝統的に「小さな政府」を掲げ、アメリカ経済を市場の見えざる手に極力任せることを推進してきた。トランプ政権下の2025年7月に成立した「1つの大きく美しい法案(One Big Beautiful Bill)」による減税措置の延長や拡大に加え、規制緩和など、依然として小さな政府路線を打ち出す側面も見られる。
しかし、現政権下、大統領による広範な経済介入の傾向が顕著になっている。行政府に勤務する官僚の数は政府効率化省(DOGE)の取り組みにより削減されているが、一方で、大統領権限の拡大解釈による市場介入が強まっている。
ラッセル・ボート行政管理予算局(OMB)局長は、2024年大統領選前、保守系シンクタンクのヘリテージ財団が作成した「プロジェクト2025」において、大統領権限の集中を正当化する「単一行政理論」を提唱し、政権入り後にその理論を実践している。
トランプ大統領の関税政策や省庁再編などは大統領権限の範囲が問われ、司法で争われているが、憲法および法制度の限界を押し広げようとする動きとも言える。
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