マンションを喰い物にしてきた怪物企業を生んだのは業界の「腐った土壌」だった。行政指導にも揺るがない談合・リベートの驚愕実態
第2回 潜入商法の怪物企業を生んだ「腐った土壌」(本記事)
マンションの住民になりすました者たちが管理組合に「潜入」し、大規模修繕工事を受注して「中抜き」や「リベート」で荒稼ぎしている。その手口は、「内部調査に協力してくれれば1万5000円のアルバイト料を払う」といった募集チラシをマンションに撒き、網にひっかかった居住者に接触。居住者の親族(夫や息子など)になりすまして修繕委員に加わり、自分たちのグループへの大規模修繕工事の発注へと誘導する「チラシルート」と、狙ったマンションの住戸を実際に購入し、区分所有者となって理事会の役員や修繕委員に就く「住戸購入ルート」の2つに大別される。
どちらのルートも、目的はマンションの大規模修繕工事の受注だ。相場の2割か、それ以上ともいわれる割高な工事費を吹っかけて仕事を取ろうとする。
この潜入商法が業界で名を馳せ、2人の逮捕者を出したのが「東大阪の施工会社」である。同社は、ほかの施工会社や建築事務所、市場調査会社などを引き連れて関西圏で稼ぎまくり、現在は首都圏のタワーマンションや多棟型の大型マンションに長い手を伸ばしている。
怪物を生んだ業界の土壌
なぜ、東大阪の施工会社は逮捕者を出すリスクを冒してまで潜入商法にこだわるのか。修繕業界に精通するマンション管理士は、数年前、この会社の創業者と面談したことを振り返り、こう語る。
「なりすましだの、潜入だの、あんな怪物じみた施工会社を生んだ元凶は、修繕業界の川上の管理会社や設計コンサルタントから川下の工事業者まで、業界全体が『談合』と『キックバック(リベート)』ばかりの“腐った土壌”だよ。それが悪徳の温床。あの会社の創業者は、防水業者の下働きから身を起こして独立したものの、2次、3次、4次の下請けで苦労を重ねた。はい上がろうと管理会社の担当者や設計事務所に営業をかけると、真っ先にバックマージンやリベートを要求されたそうだ。『金を持っていって、仕事を回されへんこともいっぱいありましたわ。社員を食わさなあかんかったから腹立ったけど、我慢、我慢ですわ。いちばん悪いのは管理会社と設計事務所でっせ』というのが創業者の口癖だった。業界の上が談合するなら、わしらもやってやろうと潜入スキームを考えて、実行したのだろう。彼らは世間的には加害者だが、業界内では被害者でもあるんだよ」




















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