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いつのまにかマンション管理組合に「潜入」し、大規模修繕工事の発注先を特定業者へと誘導する者たちの正体

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いつのまにか居住者の顔をして管理組合の席に座っている彼らは、いったい何者なのか

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「あなた誰ですか?」「この人、息子さんじゃありません」――マンションの住民有志で構成される大規模修繕委員会の席で、最近、このような言葉が飛び交うようになっている。タワー型や多棟型で、そろそろ本格的な大規模修繕が必要になった巨大マンションにおいて、とくにだ。
今年の5月、首都圏のマンション内に立ち入った疑いで、2人の男が神奈川県警に逮捕された。単なる不法侵入者ではない。男たちはさまざまな手法を駆使し、マンションの大規模修繕について居住者たちが話し合っている席に、いつのまにか座るようになっていた。そして話し合いを、ある方向へと導こうとしていた。マンションの意思を誘導しようとする彼らはいったい何者なのか。
ノンフィクション作家、山岡淳一郎氏による連載「マンション誘導―管理組合に『潜入』する者たちの正体」の第1回は、5月に逮捕された男たちの驚愕の手口と、彼らを背後から動かしていた企業グループの輪郭に迫る。

今年6月初め、マンション計画修繕施工協会の坂倉徹会長は、マンション関連の議員連盟の代表に内定していた小泉進次郎衆議院議員から「これは、いったい、どういうことなんですか」と問いただされた。

小泉氏が眉をひそめて訊ねたのは、大規模修繕工事の受注を狙った施工会社の男性社員が住民になりすまして、小泉氏のおひざ元の神奈川県のマンションの修繕委員会に潜入し、5月17日の午後、住居侵入容疑で神奈川県警に逮捕された事件についてだった。

修繕施工業界の団体のトップ、坂倉氏は、小泉氏にこう答えたという。

「この手口は、関西から流れてきています、とお話ししました。マンションの部外者で、なんの権限もない人が、付き合いのある業者に受注させようと不正に管理組合に潜り込み、あれこれ働きかけている。関西から関東に来て、こんなことやっているのかと驚きました。なりすまし逮捕事件は、議連の立ち上げにインパクトを与えましたね」

政治的解決が必要なほど深刻事態

6月5日、自民党本部では「マンション計画修繕施工議員連盟」の設立総会が開かれ、小泉氏が代表に就いた。総会には自民・公明両党の国会議員ら30名が集まった。その後も都市圏のマンションで暮らす議員らが続々と議連に加入している。

7月4日、神奈川県警は、侵入されたマンションの住民の告訴を受け、大阪府東大阪市に本社がある施工会社の営業部員の男2人について「詐欺未遂」と「偽計業務妨害」の両容疑で捜査に着手。男たちは、処分保留で釈放されているが、現在も捜査は継続中だ。

「こういうのを取り締まっていかなくては、適切なマンション住まいができなくなる。『二つの老い(住民の高齢化と建物の老朽化)』が深刻化する中で、何もかも居住者任せにはできない。ここは政治的に解決しなくてはいけないのではないか、と思っている議員さんが増えてきたように思います」と坂倉氏は加盟議員が増えている事情を語った。

「なりすまし」で逮捕者を出した東大阪の施工会社は、いったいどういう組織なのか。創業は1997年で、直近の年商は約120億円。修繕施工業界では年商400億円規模の大京穴吹建設や長谷工リフォーム、建装工業といった元請け大手には及ばないものの、中堅上位にランクされる。関係者によると、同社は修繕工事で業容を拡大したが、2020年に粉飾決算に関わる修正損を計上して大幅な債務超過に転落。21年から体制を改め、以降は黒字決算で推移しているという。

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