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大京「日本初のバルクセール」で3000戸一括処理。賃貸用に振り替えられた売れ残り物件をめぐる秘話

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「伝説のマンション王国 大京」連載バナー

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大京──。1978年から2006年まで、29年の長きにわたってマンション発売戸数首位であり続けた企業だ。2000年代半ばに経営危機に陥って以降、業界でも有名な「猛烈営業」は鳴りを潜めたが、確実にマンションの一時代を築き上げた。その大京を連載で描くことは、日本のマンションブームの核心に迫ることでもある。

第1回:タワマンブームの源流「エルザタワー55」の全貌
第2回:川口タワマン「エルザタワー」 用地取得の全内幕
第3回:大不況を3度生き抜いた大京「鬼軍曹」が泣いた日
第4回:「青田売り&等価交換」で業界の常識を変えた大京
第5回:マンション王国「大京」、女性営業第1期生の証言
第6回:大京の危機の起点「紀尾井町ビル用地」高値落札
第7回:大京がのめり込んだ豪州「1000億円投資」の顛末
※第1回は、無料会員は全文をご覧いただけます

「そんな金額じゃ、売れない」

1998年3月。恵比寿ガーデンプレイスにある米モルガン・スタンレーの会議室は深夜になっても明かりが落ちなかった。

「じゃあもう、買わなくていいですよ」

大京の海瀬和彦がそう言った瞬間、場の空気が張り詰めた。向かいに座るモルガン・スタンレーのソニー・カルシは、表情を動かさず、資料を静かに閉じる。

その様子を見据えていたのが、外資系金融機関との橋渡し役として、ここまで交渉の道筋をつくってきた大京の廣田潔だった。

テーブルの中央には、大京が抱える売れ残りマンション──いわゆる「長期滞留資産」の資料が積み上がっている。全体で3000戸以上。そのうち約1200戸、簿価にして約350億円分の売却候補がきれいにファイリングされていた。

交渉では英語と日本語がぶつかり合い、通訳が何度も割って入る。主力行の三和銀行から「早く決めろ」という催促が届いていたが、それでも海瀬は譲らない。

「そんな金額じゃ、売れない」

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