
「ビジネスとして成り立つラインになった。まずはほっとしたというところ」。ある自動車メーカーの幹部は率直な心情を吐露した。
アメリカのトランプ政権は7月23日、日米の関税交渉について合意内容を公表した。8月1日から日本に対して25%を課すとしていた「相互関税」は15%へ引き下げられる。また、4月に従来の2.5%に加えて25%の追加関税が課されている自動車と自動車部品については、既存税率も含めて15%に下がることになる。
財務省の貿易統計によると、日本の2024年のアメリカへの輸出総額は約21兆円。このうち完成車と自動車部品は合わせて7.2兆円と約3割を占める。日本自動車工業会の統計では日本からアメリカへの自動車輸出は2024年に約137万台で、日本の自動車輸出全体の3割に相当する。
関税によってアメリカに輸出する新車の小売価格が上がると、現地での販売台数が減少しかねない。4月以降、各自動車メーカーは一部で価格改定はしているものの、おおむね販売価格を維持してきた。自社で関税を負担することになるため、業績への悪影響が懸念されていた。
ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太アナリストは、自動車関税27.5%を前提に、日系車メーカー7社の2026年3月期の営業利益に対し、3兆4700億円の押し下げ効果があると分析していた。
最悪の状況は避けられた
自動車メーカーの経営が揺らげば、部品メーカー、生産ラインの設備メーカーなど、幅広い裾野企業に影響するため、「(日本政府には)何よりも自動車を優先でとにかく粘り強く交渉してもらっていた」(トヨタ自動車幹部)。
自動車メーカーの業界団体・日本自動車工業会の片山正則会長(いすゞ自動車会長)は「サプライチェーン全体を含めた日本の自動車産業への壊滅的な影響が緩和されただけでなく、アメリカの顧客にも最悪な状況が避けられたことを歓迎する」とのコメントを出した。
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