「交渉決裂こそが真の狙い?」自動車関税の議論すら拒否するトランプ "見せかけディール”の巧妙な罠

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握手する赤沢亮正経済再生担当相(右)とスコット・ベッセント米財務長官(写真:時事)

ドナルド・トランプ大統領は、さながら現代のドン・コルレオーネのごとく、日本が拒否せざるをえない強硬な要求を突きつけた。

今週ワシントンで行われた貿易協議において、アメリカの閣僚が日米間の交渉項目の「枠組み」を提示した際、トランプ大統領が強硬に主張する自動車、自動車部品、鉄鋼、アルミニウムに対する25%の関税を議題にすることすら拒否したのだ。

高関税を恒久的なアメリカの政策として位置づけ

これは、高関税が交渉の駆け引きの材料ではなく、恒久的なアメリカの政策として位置づけられていることを意味する。自動車産業が日本経済において極めて重要な役割を担っていることを考慮すれば、これは日本にとって到底受け入れがたい、予想外の強硬姿勢と言えるだろう。

協議が即座に決裂したり、日本側が再協議を拒否したりする事態には至らなかったものの、石破茂首相は憤慨する国会議員に対し、アメリカの立場は「断じて受け入れられない」と明言した。

トランプ大統領が金融市場などの圧力によって態度を軟化させない限り、両国間の合意成立は困難を極めるだろう。その代わりに、非生産的な話し合いが延々と続く可能性も否定できない。日本経済新聞は、「自動車、鉄鋼、アルミニウムへの関税が交渉のテーブルにすら上がらないのであれば、日本政府はアメリカの貿易赤字削減に協力することは難しいとの見方を強めている」と報じている。

日米両国は、いわゆる「相互関税」の一時停止期間が終了する7月までに合意に達するとされていた。しかし、石破首相は国会で「拙速な合意は本意ではない。国益をしっかりと主張しつつ、それを犠牲にしてまで早期妥結を目指すべきではない」と強調した。

政治アナリストのトビアス・ハリス氏は、石破首相がアメリカの立場を公に「断じて受け入れられない」と表明したことで、7月20日前後に予定される参議院選挙を前に、自らを政治的に不利な状況に追い込んだと分析する。

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