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陥没事故の東京外環道。事業完成のメドも立たないのに、なぜか「費用対効果」が改善。専門家が指摘する便益の「水増し」疑惑とは

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国土交通省関東地方整備局で開催された、事業評価監視委員会(2025年10月27日、筆者撮影)
国土交通省は、道路や河川、ダム、港湾などの公共事業に関し、1998年度から新規事業の採択時および採択後に一定程度の年数を経過した事業を対象として、事業の評価や再評価を実施している。当時、巨大ダムや河口堰などの建設に反対の声が強まったことを受け、公共事業に対するチェックの仕組みとして導入された。
具体的なプロセスとしては、国交省の部局が事業の評価を実施。おおよそ5年に1度、大学教授など外部有識者が評価結果に目を通したうえで、事業の必要性や進捗状況、投資効果などについて審議する。このようなプロセスにより、事業の継続または中止などの対応方針を決めるための判断材料としている。

東京外環道の費用便益が大きく改善

国交省関東地方整備局は10月9日、10月27日と2回にわたって、東京外かく環状道路(東京外環道)で整備中の関越自動車道入口(練馬区)から東名高速道路入口までの16.2kmについて、審議するための外部有識者による事業評価監視委員会を開催。この時、国交省は東京外環道を対象とした「費用便益分析」(費用対効果)の新たな評価結果を示した。

東京外環道「関越~東名」区間では、2020年10月にシールドトンネル工事で陥没事故が発生。現在も一部区間の工事がストップしている(陥没事故から5年、「大深度地下工事」は安全か)。

今回、驚きを持って受け止められたのが、前回実施の20年時点の評価よりも費用便益比(B/C=Benefit/Cost)が改善していたことだ。具体的には、東京外環道「関越~東名」区間のB/Cが、前回(20年度)の1.01から今回(25年度)は1.2へと上昇した。

B/Cは1未満となると費用に便益が見合わないことを意味し、数字が大きいほど費用対効果が高いことを示す。

前回のB/C公表は、陥没事故が発生する直前の20年7月だった。その後の陥没事故によって対策工事費や補償費が増大し、完成時期も見通せなくなっている。にもかかわらず、なぜ費用対効果が改善しているのか。

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