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大卒初任給35万!「腹をくくった」運送中堅の覚悟、ロジネットジャパン社長が語る「人的投資」とは?

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橋本潤美/はしもと・ますみ 1972年生まれ。96年に小樽商科大学商学部を卒業後、札幌通運(ロジネットジャパンの母体のひとつ)入社。人事担当部長や専務取締役を経て2020年より代表取締役社長。(写真:梅谷秀司)
慢性的な人手不足に悩む物流業界。ドライバーの残業を規制する「2024年問題」で、その過酷な労働環境が注目されたのは記憶に新しい。待遇改善を進める各社の中でも、特に積極的なのが運送中堅のロジネットジャパン(札幌市)だ。
同社は2023年度にドライバーの賃金を最大15%引き上げ。25年春には、総合職の大卒初任給を約30万円から35万円へと改定した。人的投資と成長をどう両立させるのか、橋本潤美社長に聞いた。

採用エントリー数が1.45倍に

――大卒初任給35万円は物流企業として破格の高さです。

われわれの業界は実態として、ほかの産業より長時間労働で低賃金。これは統計的に見て明らかだ。一方で、物流は社会に不可欠な仕事でもある。労働人口が減る中、将来を担う人材を先んじて確保せねばならない。そんな思いで引き上げを決めた。

反響は大きく、手応えを感じている。採用サイトへのエントリー数は前年の1.45倍に増えた。当社は札幌市に本社を置くが、採用は関東と関西でも実施している。全国各地から多くの学生に来てもらいたい。

初任給だけが注目されがちだが、処遇改善には何年も前から取り組んできた。管理職の賃金を上げたほか、ドライバーは2023年度に続き24~25年度もベースアップを行った。物流業界の水準で考えてはダメ。地域ごとのバランスを見つつ、他産業に見劣りしない額を示す必要がある。

福利厚生も充実させた。会社が奨学金を全額負担したり、育児休業時の法定給付金に上乗せして手取り額を100%維持したりする制度を設けた。安心して働ける環境を整え、物流を魅力ある仕事に変えていきたい。

――ベースアップは固定費の増加に直結します。業界の先行きが不透明な中、経営者としての葛藤はありませんか。

確かに大きな流れで言えば、人口は減少していく。事業環境の見通しは不透明だ。ただ、物流は決してなくならない。人々の生活を支えることが運送会社の使命だし、そこに私は誇りを持っている。

そのうえで最も重要な当社の経営資源は、人と車。事業計画に合わせて、この2つをそろえなければ、商売自体が成り立たない。賃上げは継続的な費用、先行的な投資になる。簡単な判断ではない。それでも腹をくくってやるしかない。

むろん投資である以上、きっちりと回収せねばならない。給料を上げる分、社員には知恵を絞ってもらう。どうすれば業務を効率化できるのか、輸送の品質を高められるのか、と。「頑張ってくれよ」とうるさく言い続けている。

――賃上げの余地があるなら、株主還元に回せという声も上がりそうです。

25~27年度の中期経営計画では、配当性向35%以上、総還元性向45%以上という目標を示した。以前は具体的な数値を公開していなかったが、株主の期待に応えるための意思表示だ。できる限りの還元をしていきたい。

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