「交渉決裂こそが真の狙い?」自動車関税の議論すら拒否するトランプ "見せかけディール”の巧妙な罠

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一方、日本で購入される標準車とコンパクトカーのほぼ半数はハイブリッド車であり、この分野においてデトロイトの競争力はほとんどない。

確かに、日本には輸入車に対する市場の障壁が存在する。しかし、なぜアメリカン・ブランドがヨーロッパ勢よりもはるかに不利な立場にあるのか、その明確な説明にはならない。

日本に対する貿易赤字はGDP比で縮小

ちなみに、1986年から1995年までは、日本はアメリカの貿易赤字の最大要因であったが(赤字全体の平均45%)、現在では、過去10年間で平均7%にすぎない。アメリカのGDPに占める二国間赤字は1.2%からわずか0.2%に減少した。

(出所)アメリカ経済分析局より

にもかかわらず、トランプ大統領は依然として日本への強いこだわりを持っている。貿易赤字だけでなく、かつてロックフェラー・センターのようなアメリカの象徴的な不動産を日本の企業が購入したことも、その一因かもしれない。

しかし、1989年の9億ドルの取引で利益を得たのは、三菱地所ではなくロックフェラー家であったという事実がある。なぜなら、この不動産はその後価値が下落し続け、三菱地所は最終的にこのプロジェクトについて破産宣告をしなければならなかったからだ。

「世界最高の交渉人」は、もはや関税を維持するための口実を見つけることよりも、取引を成立させることに関心がないようだ。金融市場やその他の要因からの圧力によって態度を変える可能性もあるが、それは彼が本当に望んでいることではないだろう。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『The Contest for Japan's Economic Future: Entrepreneurs vs. Corporate Giants 』(日本語翻訳版発売予定)

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