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台湾で起きた野党議員への大規模リコール運動は制度の悪用か民主主義の進化か。すべて不成立の結果は制度への冷静な民意

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台北で開かれたリコール賛成派の集会
台湾で起きた野党議員に対する大規模なリコール運動についてはさまざまな評価がなされている(写真:Getty Images)

台湾で半年以上かけて続く史上前例のない大規模な罷免(リコール)運動の最初の結果は、運動を進めてきた者たちにとっては厳しい結果となった、

7月26日に実施された野党・国民党の立法委員(国会議員)の罷免(解職)を問う投票では、対象となった24人の野党議員と新竹市長・高虹安(元台湾民衆党籍、汚職事件の容疑で停職中)の罷免案がすべて否決された。投票率は各選挙区で49~60%という高い水準だったが、罷免成立の要件のひとつである有権者数4分の1以上の罷免賛成票に達したのは7人のみだった。

さらに注目すべきは、高虹安氏や7人の議員に対する罷免反対票が当選時の得票数を上回ったことである。これは今回の罷免運動が逆に対象となった政治家への支持を固める結果となったことを示している。

頼清徳総統の支持率急落

今回の一連の罷免投票では推計5億ニュー台湾ドル(約25億円)超の行政コストを要し、台湾政治史上最大規模の罷免をテーマとした市民運動となったが、民進党が少数与党という2024年以来の政治構造の変化をもたらすにはいたらなかった。8月23日にほか7人の国民党議員の罷免投票と第3原発の運転延長を問う住民投票が同時に実施される予定だ。

民進党の林右昌秘書長(幹事長相当)は7月の投票結果について「虚心に受け入れる」としつつ、「これは政党間の対決ではなく偉大な市民の力の表れ」だと強調。引き続き民主主義と主権を守るとともに、与党として「社会の反応をより慎重に反省し、人民の期待に応える」と表明し、後日、秘書長の職を引責辞任した。

国民党の朱立倫主席は、政党間抗争よりも実際に政治を行うことを選んだ「台湾人民の大勝利」などと表明している。

頼清徳総統はフェイスブックで「台湾の民主主義は市民の参画によりさらに堅靭になる。我々が堅持し続ける限り、民主主義は負けない」と表明し、「台湾は憲政制度により内部紛争を解決できる国家」と直接的な敗北宣言は行わなかった。

しかし、投票後に行われた世論調査(美麗島電子報)では、頼政権への厳しい逆風が明らかになっている。頼清徳総統への「信任」は37.2%(先月比7.8ポイント減)に低下し、「不信任」は50.3%(同7.3ポイント増)と半数を超えた。執政への「満足」も34.6%(同10.1ポイント減)に急落し、「不満足」は56.6%(同9.8ポイント増)に達している。

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