
韓国で大統領の罷免が成立し、6月に選挙が行われることが注目されている。これに対し、台湾でこの数カ月続いている「大罷免」(大リコール)をめぐる政争は、日本ではまだあまり報道されていない。
現在、台湾では主に最大野党である中国国民党の立法委員(国会議員)をリコール(解職)しようと、与党支持者や市民団体が動いている。この「大罷免」は、中国から続く軍事的圧力やアメリカ・トランプ政権からの関税圧力とも連動しながら、台湾社会における政治的な対立をさらに深刻化させつつある。
本稿では、この「大罷免」の背景と現状をまとめた上で、台湾を取り巻く厳しい国際環境と台湾社会において深刻化する政治的対立の相互作用について考えてみたい。
与党が議会で過半数を取り戻すための政争
「大罷免」運動の背景は、立法院(国会)で与党・民進党が過半数を獲得できなかったことだ。
2024年1月の総統・立法委員ダブル選挙において、民進党の頼清徳氏が総統に選出されたが、立法院では民進党が過半数割れし、国民党が比較第1党となった。民進党と国民党の議席数は僅差であり、いずれも過半数を獲得できなかったが、キャスティングボートを握った台湾民衆党は国民党との協調路線を維持している。
野党連合は台湾の政治制度のなかで立法院がもつ権限を強め、民進党を揺さぶるため、憲法をはじめとする既存の法律に対する修正案を次々と提出した。政府が提出する予算案に対しても異議を唱え、文化関係の予算などが大幅に削減されたりした。
こうした議会における野党連合の行動に対し、民進党支持者や団体は「青鳥運動」と呼ばれる抗議運動などを議会の外で繰り広げてきた。そして与党側から国民党議員を罷免し、その後の補選で勝利すれば与党は過半数を回復できるとの算段から罷免運動が広がりだした。
この記事は有料会員限定です。
(残り 1931文字 です)
【4/30(水)まで】 年額プラン2,000円OFFクーポン 配布中!
詳細はこちらから
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら