有料会員限定

「武力統一」を発信した中国人インフルエンサーが台湾から退去させられた背景、台湾を単純な構図で語ることのお粗末さ

✎ 1〜 ✎ 73 ✎ 74 ✎ 75 ✎ 76
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
中国人インフルエンサー「亜亜」
2025年3月25日、台湾・台北の松山空港で多数の台湾メディアから取材を受ける在留資格を取り消され、台湾からの出国を命じられた中国出身のインフルエンサー「亜亜」こと劉振亜さん(写真: Daniel Ceng/Anadolu via Getty Images)

特集「緊迫 台湾情勢」の他の記事を読む

本記事は2025年4月21日9:00まで無料の会員登録で全文をお読みいただけます。それ以降は有料会員限定となります。

台湾で中国人インフルエンサーの強制退去が大きな議論を起こした。この強制退去事件は言論の自由と安全保障を両立させることへのジレンマを浮き彫りにした。

強制退去されたのは亜亜(劉振亜)という中国出身の女性インフルエンサー。台湾籍男性との結婚で得た居留資格で台湾に滞在していた劉は、「抖音」(中国版TikTok)上で「武力統一は必然」などと主張し、台湾移民署から「国家安全に危害を及ぼす」として居留許可を取り消された。

矛盾が目立つインフルエンサーの言動

劉は執行停止を申し立てたが、台北高等行政裁判所が却下したため3月25日までに出国を強いられた。台湾を離れた後の控訴も最高行政裁判所により、「重大かつ回復困難な損害なし」として却下された。処分の合法性に明白な疑いがなく、他の方法での来台可能性や夫も訪中可能というのが理由である。

劉の言動には矛盾が目立つ。SNSで自身と子どもを顔出しして過激な政治的主張を展開していた。だが、処分後に急に態度を変えて「武力統一は主張していない」と弁明。政治と無関係の母親として子どもを盾に自己防衛を図った。

彼女は台湾のネット番組や政府への抗議集会などにたびたび登場し、十二分に「言論の自由」を享受しながら、台湾社会の「言論弾圧」を訴える。とりわけ、日頃、中国社会を称賛し「武力統一」を訴えながら、中国への帰国を「取り返しのつかない絶望の淵」と表現し台湾滞在を望む姿勢は、台湾だけでなく中国のネット空間からも批判と冷笑を浴びた。

一方で公権力が個人の言論を理由に国外退去を命じたことは「言論弾圧」と見なす余地もある。民進党政権の対中強硬姿勢が中国出身者差別を助長しているとの懸念も存在する。

実際、中央研究院の学者など75名の研究者や識者が移民署の対応と言論空間縮小を批判。民進党政権の保守化を危惧する声は出ている。裁判所の判決も執行停止の必要性についてのみであり、移民署の措置自体の適法性は判断されていない。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD