中国は台湾が自国の一部だと認めてほしい
――そもそも「一つの中国」とは何でしょうか。
まずは外交承認をめぐる争いがある。1949年以降、中国には中華人民共和国という政府があり、台湾には中華民国という政府がそれぞれ存在するようになった。双方ともに自分たちが「中国」を代表する正統な政府だと主張し、相手を認めない立場をとってきた。例えば、ある国が台湾側と外交関係を持つと、中国側とは関係を保てない形が続いている。
ただ、1980年代末以降、台湾では民主化が進んだ。中国からすれば、台湾で台湾人意識が強まり、「中国」とは異なる存在として外交活動をしたり、独立したりする恐れが出てきた。だから、中華人民共和国を「中国」を代表する政府として承認してもらうだけでなく、台湾は中華人民共和国の一部であることを認めるよう、国際社会に以前よりも強く求めるようになった。
今日の中国は「一つの中国」原則を主張しているが、この原則の下で、中国にとって最も重要なポイントは「台湾は中華人民共和国の一部」であることを、台湾および世界各国に認めてもらうことだ。
――世界はこの「一つの中国」原則にどう対応していますか。
日本を含む冷戦期の西側諸国の多くは、1970年代に中華人民共和国を「中国」を代表する政府として承認し、中華民国と断交した。一方で、「台湾は中国の一部」という中国の主張には、100%の承認や同意をしたわけではなかった。
アメリカは「台湾は中国の一部」という中国の立場を「認識する(acknowledge)」という立場で、欧州の中にはこの問題に触れていない国もあった。日本は1972年の日中共同声明で、これを「理解し、尊重」することに加え、「ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持」するとした。
日本としては、敗戦した旧宗主国として台湾を「中国」に返還し、1972年以降の日本政府にとってその「中国」とは中華人民共和国を意味するが、その時点での現状として台湾が中華人民共和国の一部になっているとは言えないという立場をとった。
――「一つの中国『原則』」とは別に、「一つの中国『政策』」もあります。
「一つの中国」原則とは、中華人民共和国が主張する「台湾は中国の一部」が重視された考え方だ。一方で「一つの中国」政策は、アメリカなど西側諸国などがとっている立場を指し、異なるものだ。
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