知っているようで知らない「一つの中国」の意味 台湾総統選の争点には「92年コンセンサス」も

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「一つの中国」を確認したとする「92年コンセンサス」をもとに習近平氏とのトップ会談まで踏み切った馬英九氏(写真:Joseph Nair / The New York Times)

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1月13日には台湾で4年に1度の総統選挙が行われる。この数年、中国が台湾に対して軍事・経済など各方面で圧力を強めており、対中関係は選挙での争点の1つとなっている。
中国(中華人民共和国)は台湾が自国の領土の一部であるとする「一つの中国」原則を主張し続けている。台湾では「一つの中国」の立場を中台間で確認したとする「92年コンセンサス」を受け入れるかをめぐり、各候補で主張が異なる。民進党の頼清徳候補は「92年コンセンサス」を否定し、国民党の侯友宜候補は同コンセンサスを認める姿勢だ。
この「一つの中国」や「92年コンセンサス」をめぐり、世界各国や台湾社会の中だけでなく中台間でも考え方が完全に一致しているわけではない。では、「92年コンセンサス」とは何なのか。中台関係や国際政治史が専門で『中国外交と台湾――「一つの中国」原則の起源』などの著作がある法政大学の福田円教授に解説してもらった。

中国は台湾が自国の一部だと認めてほしい

――そもそも「一つの中国」とは何でしょうか。

まずは外交承認をめぐる争いがある。1949年以降、中国には中華人民共和国という政府があり、台湾には中華民国という政府がそれぞれ存在するようになった。双方ともに自分たちが「中国」を代表する正統な政府だと主張し、相手を認めない立場をとってきた。例えば、ある国が台湾側と外交関係を持つと、中国側とは関係を保てない形が続いている。

ただ、1980年代末以降、台湾では民主化が進んだ。中国からすれば、台湾で台湾人意識が強まり、「中国」とは異なる存在として外交活動をしたり、独立したりする恐れが出てきた。だから、中華人民共和国を「中国」を代表する政府として承認してもらうだけでなく、台湾は中華人民共和国の一部であることを認めるよう、国際社会に以前よりも強く求めるようになった。

今日の中国は「一つの中国」原則を主張しているが、この原則の下で、中国にとって最も重要なポイントは「台湾は中華人民共和国の一部」であることを、台湾および世界各国に認めてもらうことだ。

――世界はこの「一つの中国」原則にどう対応していますか。

日本を含む冷戦期の西側諸国の多くは、1970年代に中華人民共和国を「中国」を代表する政府として承認し、中華民国と断交した。一方で、「台湾は中国の一部」という中国の主張には、100%の承認や同意をしたわけではなかった。

アメリカは「台湾は中国の一部」という中国の立場を「認識する(acknowledge)」という立場で、欧州の中にはこの問題に触れていない国もあった。日本は1972年の日中共同声明で、これを「理解し、尊重」することに加え、「ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持」するとした。

日本としては、敗戦した旧宗主国として台湾を「中国」に返還し、1972年以降の日本政府にとってその「中国」とは中華人民共和国を意味するが、その時点での現状として台湾が中華人民共和国の一部になっているとは言えないという立場をとった。

――「一つの中国『原則』」とは別に、「一つの中国『政策』」もあります。

「一つの中国」原則とは、中華人民共和国が主張する「台湾は中国の一部」が重視された考え方だ。一方で「一つの中国」政策は、アメリカなど西側諸国などがとっている立場を指し、異なるものだ。

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