2月から台湾が実効支配する金門島周辺での緊張が高まっている。中台関係にどう影響するか歴史を振り返りながら見通す。
中国大陸沿岸部に台湾の政府が実効支配している金門島という島がある。周辺の小さな島もあわせると面積はおよそ150㎢、沖縄県の宮古島とほぼ同じ大きさだ。台湾本島から200km以上離れ、対岸の中国・福建省から最短でわずか2kmの「最前線」である。
その金門島周辺で緊張が続いている。2月14日、台湾側の管轄水域内に侵入した中国漁船が台湾当局の追跡中に転覆。乗組員4人が海に投げ出され、うち2人が死亡した。中国政府は悪質な事件だとして猛反発した。これまでこの海域で黙認していた台湾側の管轄権を否定し、公船によるパトロールを続けている。
台湾からは、中国が尖閣諸島で日本の実効支配を崩そうとする手法に酷似していると警戒の声が上がる。ある専門家は、中国が金門島周辺海域を事実上の実効支配下におき、金門島そのものに対する支配権を台湾側から徐々に奪っていくだろうと警鐘を鳴らす。
こうした中国の台湾に対する行動を見て、「統一への圧力」と断じたり、「サラミスライス戦術(既成事実を積み上げ、実効支配を進めていく手法)」と評したりしている向きがある。ただ、中台間の根底にある問題のメカニズムを解明することなく、いたずらに危機感を煽る風潮自体には慎重であるべきだろう。
漁船の転覆事故を発端に高まる金門島をめぐる中台間の緊張は、台湾海峡の現状変更につながるのか。事故から3カ月が経った金門島では、いま何が起きて頼政権の対中国政策にどう影響するか。それを読み解くためには金門島について「1992年」という年の意義など歴史的経緯を振り返る必要がある。
かつては台湾側が台湾海峡を封鎖していた
金門島をめぐる中台緊張の歴史は長い。第2次世界大戦後に行われた国共内戦に敗れた中国国民党(以下、国民党)率いる中華民国政府は台湾に逃れたが、当時の蔣介石政権は中国大陸の奪還、いわゆる「大陸反攻」の拠点として金門島を死守した。
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