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私募REITで史上初、「払い戻し」が起きた重い意味。供給過多で追いつかない投資家の需要、「ヒューリック」が駆け込み寺に

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価格変動の少なさから機関投資家の人気を集めてきた私募REITに、異変が生じている(撮影:今井康一)

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「うちが『第1号』にならなくてよかった」

関係者の間で、あるREITが話題になっている。舞台は東京証券取引所に上場しているJ-REITではなく、未上場で機関投資家だけが取引できる私募REITだ。

2010年に最初の運用が始まって以来、今年3月時点で私募REITの銘柄数は60と、J-REITを超えている。昨年度の増資額も約4500億円と、市場が軟調なJ-REITにダブルスコアをつけ一見すると好調にみえる。だが、内部ではある「異変」が起きていた。

史上初の「払い戻し」

今年初め、私募REITの投資口を保有していた地域金融機関が持ち分の売却を決めた。私募REITは取引所での売買ができないため、通常は証券会社が投資口を買いたい別の投資家を紹介して取引を成立させる。私募REITの中途換金自体は珍しいことではなく、いずれも投資家同士で売買のマッチングが成立してきた。

ところが、この時の買い手は投資家ではなく、発行体自身だった。つまり自らの投資口を取得する形で「払い戻し」をしたわけだ。幸いにも金額は数億円程度で、保有物件を売却してまで現金を捻出する必要はなかったようだ。

私募REITの歴史上、払い戻しは初めて。異例とも言える今回の事態はどうして起きたのか。複数の関係者は「投資口の買い手が見つからなかったのだろう」と声を潜める。そこで発行体が投資口を払い戻す必要に迫られたようだ。

払い戻しをめぐる騒動は、私募REITが岐路に立っている事実を示す。

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