NTTは海外へ、データセンターを持てないJ-REITの欠陥。政府は取得に前のめりも、制度設計は空回り

「ARES(不動産証券化協会)はかなりショックを受けたようだ」
不動産業界で、そうささやかれている出来事がある。7月14日に、NTTデータグループが上場させたREIT(不動産投資信託)だ。アメリカなどに立地するデータセンター(DC)6棟を組み入れ、上場時の時価総額は約10億ドル(約1500億円)がついた。
業界団体が気を揉んだのは、上場先が日本ではなくシンガポール証券取引所だったからだ。日本有数の大企業が抱える不動産の受け皿として、日本のREIT市場は選ばれなかった。DCへの投資が事実上封じられているREITの制度疲労や課題を浮き彫りにした。
「海外資産」組み入れの壁
「S-REIT(シンガポールREIT)は海外アセットに対する許容度が高い」。NTTデータグループDC&GB推進室の真崎達也シニア・スペシャリストは、シンガポール取引所を選んだ決め手を話す。
社内でDCを流動化する検討が始まったのは2年前。NTTグループの組織再編によって、海外のDCを保有・運営するNTTリミテッドがNTTデータグループに移管されたことがきっかけだ。
複数のDCが資産に加わったことでバランスシートが膨らみ、投資家から資産効率の低下を懸念する声が上がった。そこでDCを組み入れたREITを組成してオフバランスを図りつつ、施設運営や資産運用を受託するスキームを考えた。
では、REITをどの国の取引所に上場させるか――。日本やシンガポール、アメリカなどが候補に挙がる中、まず選択肢から外れたのが日本だった。DCのほとんどは海外に所在するため、REITもおのずと海外資産で構成される。今回上場したREITの当初資産の所在地はアメリカが4、オーストリアが1、シンガポールが1物件だ。
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