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高市首相はじめ「積極財政」論者たちが使いたがる「純債務」比率の正体とは? 引き下げるには結局、「PBの黒字化」を目指すしかない

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積極財政派の声が大きくなってきた(写真:つのだよしお/アフロ)

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高市早苗首相は、11月7日の衆院予算委員会で「単年度のプライマリーバランス(PB)という考え方は取り下げる」と答弁し、前政権が掲げた「2025~26年度にPBの黒字化を目指す」という目標を撤回した。

首相は、PBの代わりに公的総債務の対名目GDP比(総債務比率)の引き下げに重点を置くとした。

国会における答弁ではないが、首相をはじめとして積極財政を主張する人々は、総債務に代えて純債務を用いる趣旨の発言を繰り返してきた。

「責任ある」という枕詞の意味

基礎的財政収支と訳されるPBは、税や保険料などの政府収入から利払いを除く政府経費を控除した収支であり、公的債務の年々の返済原資となる。「PBの黒字化目標の撤回」は、当面、公的債務の増大を放置することを意味する。

ただし、代わりに「総債務比率の引き下げ」が計られるので、公的債務の拡大は名目ベースで経済成長の範囲に収めることを目指すとする。したがって、依然として財政健全化に向けて、債務拡大には歯止めがかけられているというわけだ。

積極財政でPBが赤字となるものの、赤字拡大に対する歯止めがあるという意味で、積極財政に「責任ある」が冠されるのであろう。

それでは、なぜ、積極財政派の人々は、さらに総債務を純債務に置き換えようとするのであろうか。

本稿では、日本政府の純債務の挙動に関する最近の学術的な議論を踏まえて、純債務の対名目GDP比(純債務比率)の正体を明らかにしてみたい。そして、純債務比率の低下は、長期的にみればPBの黒字化と同じであることを示してみよう。

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